箱の中の猫は、開けてみるまで生きているし死んでいる。確定されない事実は可能性のある限り広がり続け、分岐したそれらは同時進行する。それが、パラレル世界というやつさ。

 猫は生きているかもしれない、死んでいるかもしれない、いや、そもそも猫なんていないのかもしれない。

 君なら、箱を開けるかね? もし開けるのならば、一体そこに何を見るのだろうね?

 

 私は箱を開けましたよ、ご主人。

 広がり続ける可能性の一つを、中身の猫を確認しました。

 

 空は雲一つない快晴で、私を廃棄工場へ運ぶために待っていた業者の人間たちが目で合図してくる。

 もう、いいか、と。

 私は一つ頷いて、自らの足で業者の人間たちの元へ向かった。

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シュレーディンガーの猫 洞貝 渉 @horagai

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