第13話 エルフとの出会い
その後、しっかりと洗浄をし終わる。
本当は皮剥から解体とかしたほうがいいけど、ひとまずこの辺りまでやっておけば平気だ。
「ふぅ、出来ました」
「見事だ。さて、帰るとするか。その荷物を抱えていくわけにはいくまい」
「あれ? 狩りの試験はいいのですか?」
「うん? ……言い忘れていたが、その試験は合格だ。君は魔法は使えるから問題ないし、生き物を殺すこともできた。そこができれば、最低限やっていけるだろう」
「あっ、そういうことでしたか。じゃあ、これで冒険者になっても?」
「許可しよう」
「やったぁ! ありがとうございます!」
これで念願の冒険者になれる!
自由の象徴と言われた憧れの仕事だ。
……私がずっと欲しくても得られなかったものでもある。
「ただし、エリゼ殿といくこと、俺に声をかけるのが条件だ」
「むぅ……子供じゃないんですから」
「俺からしたら、まだまだ子供だ。俺は二十五歳、君は十八歳なのだから」
いや、確かにそうなんだけど……私、合計すると五十歳くらいだし。
でも、一人では危険なのは確かね。
「ええ、わかりました」
「それなら……ん?」
「何かきますね……上です!」
ガサガサと音がして、何かが上から降ってくる!
そこにいたのは……途轍もなく綺麗な女性だった。
黄金の髪に、しなやかな身体、整った容姿。
多分……これが噂に聞く、エルフだ。
「見知った気配がしたから来てみれば……領主様だったのね」
「これはこれは、ミレーユ様ではありませんか。ところで、こんなところまできてよろしいのですか?」
「ふん、良いのよ。あの連中は堅苦しいことしか言わないから。私だって、自由に動きたいし……ところで、見ない顔ね?」
そこで私達に視線が向けられる。
シグルド様と並ぶと、まるで物語に出てくるような感じだ。
……シグルド様の口ぶりから言って、丁寧に対応した方がいいわね。
「ああ、紹介しよう。私の婚約者であるアリス殿、その従者であるエリゼ殿だ。二人とも、この方はエルフ族のミレーユ様だ」
「は、はじめまして、アリスと申します」
「はじめまして、エリゼと申します」
「アリスにエリゼね、よろしく。それと、別に様とかつけなくて良いから」
どうやら、気さくな方らしい。
エルフは人嫌いで、頭が硬いって聞いてたけど。
「そういうわけにもいかないかと……いや、アリス殿は王族の血筋だから問題ないか」
「あら? そうなの? というか、こんな辺鄙なところに王族の血筋……貴方のお嫁さんってわけ?」
「ああ、そうなるな」
「ふえっ!?」
「あれ? 違うみたいよ?」
「い、いえ! 合ってます!」
改めて、人に言われるは初めてだったので変な声が出ちゃった。
ダメダメ、しっかり契約は守らないと。
「ふーん、初々しいってことかしら。それにしても、レッドバナナを持ってるの? それ、美味しくないのに」
「あっ、これには食べ方にコツがあって……こうやって剥けば美味しく食べられるんですよ」
「はい? ……冗談って顔じゃないわね」
「俺が保証しよう」
「……わかったわ」
そう言い、私の手から恐る恐るバナナを受け取り……。
「はむっ……へっ? お、美味しい……? うそ!? 美味しいわ!」
「ですよね? これならエルフさんも食べられるかと。確か、果物や野菜しか食べられないと聞いていたので」
「どこで知ったとか、長生きしてるのに私達は何をやっていたとかは置いといて……ひとまず、感謝するわ。これで、同胞達も救われるわ」
「えっと?」
「お礼は後で必ずするから! それじゃあね!」
そう言って、ふわっと木の上に飛び乗り去っていく。
まるで、風のような人だ。
「はは……エルフってああいう感じなのですか?」
「いや、アレは特殊な例だ。エルフは基本的に里から出ることはないし、外界と関わらず静かに過ごすことを好む。だが、何処にでも例外はあるということだ」
「ふふ、まるでお嬢様のようですね」
「ははっ! 違いない!」
「むぅ……言い返せない」
エルフの変わり者かぁ……。
お礼はともかく、また会って話してみたいな。
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