第9話 推しは癒し。恋人は温もり
夜が明け、まだ町が寝静まっている頃、私たちは旅立ちました。酒屋の支配人の言うとおり西へと向かう。
広大な小麦畑の中にぽっこりと森があり、その不自然さに、目的地はそこだとすぐに分かりました。
森に入り小一時間、大きなカシの木を見つけました。私たちは馬を降り、カシのたもとに歩を進める。
地面を掴むような太い根と根の間に岩がありました。自然石のようだけど、見ようによっては精霊ルビスのようにも見えます。
おそらくこれは精霊ルビスの御姿岩。この土地は精霊ルビスの加護に満ちている。
豊作の小麦畑。穏やかな気候。おそらくは聖域。魔王もこの土地を嫌っていたんだと思う。そして、勇者アラン・レイフィールドが地上に姿を現したのがここだった。
町の人たちが守ろうとしていた気持ちがよく分かりました。もちろん、私にこの場所を本に書く気はありません。
私の右肩がバートの太い腕に触れていた。バートの息遣いが聞こえる。
私の手はバートの手を探していた。バートの手に触れるとバートは私の手をしっかりと握り返してくれた。鳥のさえずり。やわらかな木漏れ日。精霊ルビスの森は私たちをやさしく包む。
私は心の中でつぶやいた。
さようなら、エイミー・マクドーネル。
《 了 》
訳あってペンネームで推しごとするヲタクの恋のススメ方 悟房 勢 @so6itscd
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