第25話
実は。
由亀も未果もことの重大さがはなはだしかったせいか、すっかり失念しているが、緑子の店にあのカメはすでにいない。
というのも、未果が「珍しい甲羅」と感心していたのもあながちはずれではなく、実は緑子があの神社内で施した防衛の一つだったのだ。敷地内の小さな池を囲む策にはその支柱の頂点に動物をかたどった石像がある。その一つに緑子は姿をカモフラージュするため、自身の力の一部分をカメの石像に封印しておいたのだ。
それが、あの日。そう未果がカツに追い回され、由亀が駆け付けた日。走る由亀がそのカメの石像に触れたのだ。その瞬間、石像は実物のカメになり、彼らと行き違いにたまたま出店の景気づけにやって来ていた店主が発見し持ち帰って、あれよあれよと出店のケースの中に。それを由亀がゲットし、緑子の元へ持って来て、いや持って帰ってしまったというわけだ。ちなみにカメの石像がなくなってしまったわけではない。緑子のエネルギーは尋常ではないため、一部とはいえ実物のカメに変質するくらい容易らしい。今現在緑子がどのようにその力を分散させているかは極秘のようだ。下手をしてまた由亀あたりがいじくらないか、さすがの緑子も気が気でないようである。
しかし、これもいつか緑子は由亀に話すのだろう。今話さないのは力そのものではなかく、力の使い方に気を払ってもらいからかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます