第二章 ご縁どうお掛けします?
第4話
一月のくすんだ白色の空。雪は降らないけれど、そんな空は梅雨時期よりも澄んでいるようにさえ見える。その地域の住民にとっては。
振替え休日のこの日はまさに冬の晴天。
ある書店に、由亀の姿があった。そこは先日、由亀と未果が共に歩いたアーケード通りの並びにあった。三階建てで各階にジャンル分けされた一階。雑誌や週刊誌、新刊が並べられていた。
その彼の肩に恐る恐る手が伸びていく。
「燦空さん? どうしたの?」
気配を感じ取ったのか、由亀はすばやく振り向いた。そこにはショットガンと和鋏を構える輩に遭遇した女子クラスメートがいた。伸びていた手はすばやくひっこめられた。
「こ、こんにちは」
気づかれることを予想していなかった様子で、わずかに体を上ずらせ、挨拶もぎこちない。
「暇つぶし」
由亀はクラスメートの型崩れした平静に、手にしていたハードカバーの本を閉じてから、その表紙を見せ、平積みの上に戻した。
「燦空さんも?」
「わ、私は今日発売のを買いに来て」
いたっていつも通りの教室内の同級生の延長線上にいる感を保とうとしている。じっと見る由亀に合わせられないというか、どう合わせたらいいのか逡巡しているようで、目が泳いでいる。いや、目ばかりではない。もうすでに首も四肢も、指のあちこちが落ち着きなく踊り始めていた。
それに気づかない由亀ではない。
「俺、ちょっとお茶しに行くんだけど、燦空さんが良ければ、どう?」
「うん。じゃ早く買って来る」
歯切れの良い返答をして、何も新刊が売り切れ寸前の取り合い状態というわけでもないのに、未果は急となった。
その反応に由亀はある確信を持った。
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