第12話

「親父、帰ってきたよ」

「よく無事で帰ってきた。伝説は守られたようなだな」

「ぎりぎりだったが、何とか。 次は分からないが」

そして、白髪の男にもたれかかる様に倒れ、眠りについた。

「どうなんだ息子は」

白髪の男が白衣を着た長身の男に聞いた。白衣の男はその質問を無視して、男を移動させ検査するように、後ろに控えていたスタッフに指示をだした。 そして、男が連れ去れると、

「脳を使い過ぎました。分かっているでしょう。彼はもう使えません。恐らく、ギフトも無くなっているでしょう。音は音、量子コンピューター並みの計算も出来ません。ただの人間になってしまいました。もう価値はありません、このまま処分します」

「この年になると、何か執着心が沸くのだろうか、あいつらは俺の息子なんだよ。 今回の賞金の半分は俺のものだろう、ならあいつを生かしてくれ」

「あなたが望むならそうしますが、あれはただのクローン、あなたの出来損ないですよ」

「それでも、俺の一部だ、出来ることなら、これからは、俺の出来なかった普通の生活を送らせたい」

「良いでしょう。私としては、現時点でクローン技術の発表をする気はありませんし、単に、研究費欲しさにあなたをお誘いしただけですから。そう、個々の研究所ももう使えませんから、よろしければここにお住い下さい。彼らにもここは把握させてないはずですから」

「ありがとう]

「もう、会うことは無いでしょうが、お元気で」

彼らが去ったあと、カプセルの中で眠っている息子たちをみて白髪の老人は大きく息をついた。 

俺たちは勝った。もう戦うことは無い。これからは平穏な生活を送れるだろう。いや、もしかして、俺たちは勝つことで、取り返しのつかないことをしてしまったのではないだろうか。俺の頭が、これからの世界を見ることが無いように、ウォッカを煽った。そして、これから始まる穏やかな生活を思った。                 

            了 

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