第11話
オーラス。トップはC、俺は1400点差の2着。Bはトップまで4600点。 Aは役満自摸でもない限りトップは取れない。順位点含め、俺とCは上がれば優勝、Bは俺を3着以下に落としてトップ取れば優勝。Aは役満自摸条件。もう、俺には天に祈る以外手は無い、軽く早い手がくるように。ここまで追い詰められたのは何時ぶりだろう。遠い昔に仏師と呼ばれる裏プロとの勝負依頼か。まあ、あの時は勝負というより奴が勝手に下りただけだが。サイコロはどんな目も出せるが、山が分からなければ意味はない。ここまでくれば天に運を任すしかない。一呼吸でボタンを外した。出目は1,1の右2。正直、俺は諦めていた。全ての武器を無くし、徒手空拳で戦うとは。今までカモにしてきた奴らと同じだ。因果応報。博奕打ちは衰え、地獄の業火で焼かれるしかないのか。そして開けた配牌は、赤い。そう萬子と字牌が多い。混一色か。鳴けるのはありがたいが、重すぎる。字牌はオタ風。一通狙いは必要牌が限られ厳しくなる。しかも萬子は1と9が5枚。1500点で良いのに。 タンヤオが一番有り難かったが、文句を言っても仕方がない。今ある情報で藻掻くだけ藻掻く。字牌は捨てられていき、6巡目には清一色を目指すしかなかった。鳴いて聴牌に持ってきたかったが、上家に抑えられている。しかも上家は抑えながらも、手牌はすすでいる。Aは役満条件なので、無理やり手を作っているが、無理だろう。 Bも聴牌は近いが、優勝条件が厳しい。結局、俺とCの戦いだろうか。それから5巡後。ようやく俺はテンパった。面前清一色の多面待ち。待ち5面しかも8で九連宝燈。まさか、この場面でこの手が来るとは。1500点で十分なのに。もう、数順でCがテンパるだろう。Bはテンパっているが条件が満たせてない。おれは牌を横に置き、リーチをかけた。役満でリーチしかも点数がいらない状況。まったく狂気としか思われないだろう。だが、もうあいつらあたり牌を掴んでも降りれない。 降りたとしてもそれは勝利を逃すことであった。であれば、聴牌宣言にデメリットはない。しかも、BはこれでCに2000点直撃をまくれる。CはこれでBもケアしなければならない。もう出来ることはこれで全てだ。あとは牌をめくるだけだ。案の定、CがBの当たり牌を掴んで降り、そして数順後。久しぶりに盲牌をした。萬子、そして八。
遠くで歓声が聞こえている。もう意識は限界だ。付き人に支えられ、何とか優勝のコメントを言ったようだ。いつもと変わらず「今日も神仏の御加護があり、勝てた。帰りにお礼参りに行かないと」と。そして、倒れるように付き人に支えながら会場を去った。そして、神社から、姿を消すようにして、ここに帰ってきた。
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