第8話

 聖女がフクシ? フクシとは何?


 「あの~。意味がわからないのですが」

 「そうか。要は、聖女は精霊遣いの補助役だ」

 「え~、聖女が補助!?」


 私が驚いた声を上げれば三人ともそうだと頷いた。

 どうやらこの人達は、本当にそう思っているようだ。まあだからこの待遇なのかもしれない。


 「うーん。そうね。私の祖母も精霊遣いだったのよ。あなたが産まれた年に亡くなっているわ」

 「え……じゃ、私は生まれ変わりだと?」


 そう思っているの?


 「そういう事ではなくて、精霊遣いは同時に二人は生まれないって事よ。いなくなったら新しい精霊遣いを精霊が探し出すの」

 「はぁ……」

 「祖母の時代は、聖女は現れていないわ。必要なかったからね」

 「そうなのですか? 必要ないとはどういう事なのでしょうか」

 「これは、一から話した方が良さそうね」


 そう夫人が言って、自身が信じている精霊遣いと聖女の、いやこの国の成り立ちを話し始めた。


 そもそもこの原始の森は精霊が住む森で、そこに人間が助けを求めやってきた。戦争が起きて、逃げて来た難民だった。

 精霊は、条件を出した。人間の負の感情は不浄の霧を発生させる。だから争いごとはすぐに解決し、発生した不浄の霧は消し去る事。その為の力を代表者に授けた。


 だが長年暮らして逃げ込んで来た人間の子孫だけになると、精霊が見えない者達が増えていく。

 元々、ここに逃げて来た者が精霊が見える人間達だったが、産まれた者がそうとは限らないからだった。

 そこで、人間の代表とこの森に残る条件として話し合った結果、本当の事を語り継ぐ家系を選び、精霊が見える瞳を受け継ぐ事になる。

 それは、人間の代表とは違う者とした。人間の代表の役目は、極力争いを起こさない様にする事だった。


 そして万が一、不浄の霧で王都がどうしようもなくなった場合は、代表者を変える事。元の代表者は、争いを起こした者と一緒にこの森を出て行く事。

 まだ一度も代表者は出て行った事はない。

 ――との事だった。


 なんとまあ、私が習った精霊の話と全然違うのですが?

 どっちが本当なのだろう。

 私としては、こっちの話が本当だといいなぁとは思う。

 けど、今の話には聖女も精霊遣いも出てこないのだけど?


 「金の瞳を持つ者が、精霊が見える瞳を持つ一族って事よ。そして、その者は精霊遣いを守る役目も仰せつかっているの。婚姻は、私達人間側がつまり金の瞳を持つ一族が、精霊遣いを守る為に考えた方法の一つって事ね」


 要するに、私との結婚は儀式って事ね。

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祝福されし花嫁は精霊遣い すみ 小桜 @sumitan

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