第7話

 朝食を済ませると、さて話し合いましょうと言う事になった。

 さあ、ドンと来いよ! こちとら嫌がらせなどは慣れているわ。


 「結婚式だが、何か希望はあるかね?」


 スピリナイト辺境伯がそう言った。

 結婚式!? 色々な話ってそれ? いや普通ならそれかぁ。

 何だか拍子抜けしちゃった。私一人だけ身構えていたみたい。


 「いえ、特段……」

 「では、精霊祝福結婚式で宜しいかしら?」


 うん? 精霊祝福? 夫人の言葉に私は首を傾げた。


 「それは、どのような」

 「あらご存じありません?」

 「言っただろう。陛下は、王家に伝わる方を信じていると」

 「そうなのね」


 え? 何の話をしているのでしょうか。


 「私が、精霊の前で精霊の騎士となりあなたを生涯愛し守るという誓いを立て、精霊遣いであるあなたと生涯を共に生きる事を誓う儀式を行う結婚式だ」


 うん? それって騎士と精霊遣いの結婚式って事?

 彼が精霊の騎士に扮すると。要するに、この辺境には何かそういう昔話の様なのがあるのね。でも精霊遣いでいいのかしら?


 「相手は私でいいのですか?」

 「何を言います。それを言うなら私でいいのかでしょう」

 「へ?」


 ディオダート様の返しに、つい淑女らしからぬ声を出してしまったわ。

 どうやら私の質問の意図がわかってないらしい。聖女でなくてよいのかと言いたかったのだけど。もしかして、聖女だと思われている?


 「あの私は、聖女ではなく精霊遣いです」

 「わかっております」


 ディオダート様が神妙な顔つきで頷けば、辺境伯も夫人も頷く。


 「えっと。相手は精霊遣いでいいのですか?」

 「あぁ。なるほど。あなた聖女の方が上と思っていると言う事ですね」

 「はい!?」

 「長い年月が経ち、色んな事が変わってしまったようで、私もここに婿に来て話を聞いた時には信じられなかった。だが、息子が産まれあなた精霊遣いが現れ、ようやく信じられるようになった」

 「はぁ……」


 辺境伯が、うんうんと一人納得しながら語っている。


 「聖女も長らく、いなかったからな」

 「そうね。必要なければ指名しませんもの」


 ううん? 何だか私だけ蚊帳の外だわ。言っている事がさっぱりわからないわ。


 「あぁ、すまぬ。つまりな、聖女は副使ふくしなのだよ。いつの間にか『聖女』と呼ばれるようになり、名から凄い人物だという事になったようだ」


 と、驚くような事を辺境伯は言ったのだった。

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