第6話

 『ねえ、ルダ。浄化をお願い』


 ふと声を掛けられたと思い目を覚ませば、精霊達がいた。

 よく考えれば、動物じゃないわよね。

 見た目は、ふわふわした毛が生えた動物のようだけど、金の瞳に淡い緑色。それなのに、森の中にいると森と同化して。

 いやそれより、フワフワと浮いていたのよね。しかも物を通り抜ける。

 話せる事もそうだけど、浮けたりする事も不思議に思ってなかったから気づけなかった。精霊達がみんな浮いてるからそういうものだと思うじゃない。

 大きさは、手乗りサイズ。小さな小さな動物。

 そう言えばたまに、犬っころにも話しかけていたっけ。もちろん、犬は話せない。だから途中からは気づいていたのよね。動物が話せる動物だと。

 ここで、動物は話せないと気づけばよかった。

 そうすれば、こんな事にはなってないのだろうなぁ。


 「おはよう。それは聖女様に……って、私が伝えないといけないのよね」

 「聖女?」


 精霊達が顔を見合わせている。精霊達が聖女を知らない? あ、呼び方が違うのかもね。

 まあ私でも出来るから近くならいいか。


 「歩いていけるところ?」

 『うん。すぐそこ』


 精霊達が一斉に、外を指さす。

 カーテンを開けると、朝日が差し込み眩しさに目を細める。


 『あそこらへん』

 「いや、結構遠くない」

 『ここからでも大丈夫』

 『うんうん』


 ふむ。見える場所なら出来るとは聞いたけど、まあやってみるかな。


 「不浄なモノを清めよ」


 淀んで見える森を眺めながら言えば、スーッと淀みがなくなった。

 うん。我ながら凄い。


 ふと今思ったけど、祈りって言うけど実は祈りと言うより呪文みたいよね。場所を特定してそこを清めたいと思わないと清められない。

 聖女が、場所を特定せずに祈って清められるのかしら?

 うん。聖女なら出来るのかもね。


 この呪文の言葉も精霊が教えてくれたのよね。

 淀んでいる様な場所が目の前にあって、それを見つめ言えばそれが消え去った。

 それが楽しくて、色んな場所で浄化していて王様の耳に噂が届いちゃったのよね。

 

 「おはようございます。若奥様」


 扉をノックする音と一緒に声が聞こえた。


 「あ、おはようございます」


 侍女達が、「失礼します」と入って来た。そして、着替えを手伝ってくれる。

 今日は、ピンク色の可愛いドレス。私の年齢的にどうかな。なんて思うも嬉しい。

 なにせ精霊遣い仕様として、いつも同じドレスを着せられていた。同じと言っても昨日着たのを着るのではなく、同じドレスしか与えられなかったのだ。これは、妃様の嫌がらせ。くすんだ緑色のドレス。

 それから思えば、この可愛らしいドレスは嬉しい。

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