あなたに花とオルゴールを

@integral1

あなたに花とオルゴールを

私はエレトニア共和国でスパイをしている


「やめろ、いつかは、この行動で君は後悔するかもしれないんだぞ!」


「やめて、私にはまだ小さい娘がいるの」


バン!!!・・・


銃声が鳴り響いた瞬間、若い夫婦が倒れた。


「これも仕事なんだ・・・・・・」


あなたのそばにいればそれでいい


5年後・・・

私は今、敵国である、同じくヨーロッパ、アルパニア連合に潜入している


「お前、スパイだな?」


くそ、バレたか…


「おい。まて!」


私は全力ではしった。もう、ここなら、追手はやってこなそうだ。

ん?こんな場所に店がある。少し中心街から離れた場所だが、

ここのお店に身を潜めよう。


なんだ、オルゴールか?


「お姉さん、オルゴールはお好き?」


「ええ、まぁ」


「まあ!良かったらコレもみてって!あとこれも!」


彼女は私の給料の何ヶ月分もの商品ばかりを勧めてくる。かなりの商売人だな


「悪い、あいにく持ち合わせがなくてね。また今度にするよ。」


「なんだこの国は・・・裕福な国とは聞いていたがこんなに裕福で商才のある人ばかりなのか・・・」


町はとても活気がついており、私の国とは正反対の国であった。


私は経済が破綻した時代に生まれ、当然ながら一部の層を除き貧困にあえいでいた。


私は家族たちを守るために必死の努力で、国の諜報機関に配属されることができた。

おかげで家族たちをある程度食わせてやれるくらい稼げている。


お金のためなら人を殺めることもできる。大事な人を守るために。


といっても家族たちは当然ながら、私がスパイをしていることが知っていない。当たり前だ。表向きでは、国の役所で窓口をしていることになっている。


私はコートをを口元に寄せながら、ターゲットのもとに歩いて行った。

今回のターゲットは、この国の軍とつながりのある武器商人を処分することが目的だ。


ついでに軍の上層部も一緒に処分出来たらいいのだが・・・


ある日の水曜日


「あら!この前お店に来た人じゃない」


「人違いでは?」


「いえ、このきれいな青い目にロングの金髪にハスキーの声は絶対にあなたよ」


ちっばれたか。まあ仕方がない。自己紹介でもしておくか。


「あなた、名前はなんていうの?私はカーナ・メルノアよ」


「私はナーヤ」


嘘である。

これで本名を教えるのはスパイとして失格だ


「どこから来たの?ここら辺の人?」


「違う。少し遠い土地からきた。」


「あら、長旅ご苦労様。少しあがってお茶とかどうかしら」


私は促されるがまま、彼女のお店と併設されている家に上がった。


内装は有機的な形となっていた。


「紅茶はどれがいいかしら」


「何があるの?」


「ダージリンにカモミール、色々あるわ」


「カモミールで」


「そうだ、私が気に入っているオルゴールを今から持っていこうかしら」


彼女はそういうと、奥の部屋から持ってきた。


「このオルゴールは亡くなったお母さんが作ってくれたものなの。」


そういうと、彼女はぜんまいを回し、曲を流した。


「いい音色だね」


「私が学校でつらいことがあったときはいつもお母さんが流してくれたの」


オルゴールから流れてくる音色は暖かく、でもどこか儚い音がした。


「少し切ない曲調だな。」


「そうだわ。でも、ここでお母さんの思い出を振り返るの好きだわ。」


「よかったら、一緒にオルゴールを作らないかしら。」


「いや・・・わた・・・」


「よし!つくるわよ!!」


上品ぽさがある女性ではあるがたまに見せる勢いには私も圧倒された。


「まあ、最初から作るとなると時間がかかりすぎるから、円筒の表面に突起でもつけてみない?」


「私にそんなセンスや技術を持ち合わせているとでも?」


「いいから、私が教えるから!」


相変わらず、彼女の勢いには叶わず、奥にある工房に足を踏み入れた。


「ここをこうして・・・そうそう」


「この部分に突起をつければあの音がでるのか」


わたしは、彼女に助けてもらいながら、金属に突起をつけた。


「続きはまたの機会ね」


気づいたら夜になり、夕ご飯の時間になった、


「ナーヤ、もう帰るの?」


「ああ。さすがに長居はできない」


「夜ごはん、よかったら食べていかない」


テーブルに並んでいたのはどれもおいしそうなものばかりで、組織の何倍ものおいしそうなものばかりだ


私は食材にお祈りを終えた後、口に運んだ。


「おいしい」


「よかったわ。気に入ってもらえて。自信作なのよ。」


おいしいものを食べた後はお風呂に入ったが・・・


「どうして、君までお風呂に入っているんだい?」


「だって、あなたとたくさん話したいから」


変わった人だ。


「背中洗うわね」


彼女の洗い方はとても気持ちよく、うわの空になるような感じがした。


私は、そのままの流れで泊まることになり、個室に案内されるかと思いきや、彼女のベットに案内された。


「だからどうして、君のベットなんだ!」


「私はあなたと一緒に話したいからよ」


彼女は寂しがり屋なのか?


私は明かりのろうそくを消して、部屋を暗くした。


ベットに横たわってからしばらくして、彼女が口を開いた。


「私はお母さんとお父さんをなくしているの。私が10歳のころかしら。」


「そうか」


「だから、おばさんがたまに様子を見てくれるのだけど、普段は一人でとても寂しくて・・・でも、あなたが来てくれた時はとてもうれしかったわ。」


「そう・・・」


「だからさ・・・」


「しばらくうちにいない?」


まあ、私は少し悩んだが、彼女の生い立ちを聞いたら少し気持ちが変わった。


「わかった。少しの間だけね。」


「やったわ!。良かったら明日、中心街まで出かけない?」


「別にいいけど・・・・・・」


次の日


「この服似合うんじゃないかしら」


なぜなんだ・・・・・・

私はなぜこんなお姫様がお出かけするような服を着せられているのか


「私は普段着でいいのだが」


「だめよ!せっかくおでかけするんだから!おめかししないと・・・」


「え?ちょ・・・・と」


「行くわよ!」


私はナーヤとお揃いの服でデートをすることになった。


私とメルノアは町の中心街にでかけた。


「ここのカンノーロが美味しいの」


小麦の生地の中に甘みのあるリコッタチーズが入ったスイーツだ。


「美味しい」


「あら、口元についているわよ」


「はずかしい、、、」


「あらかわいいんだから」


「いくぞ///」


私は照れながら次の場所へ向かった。


次は蒸気船に乗り、ベンチに腰を掛けた。


「そういえばナーヤにプレゼントがあるの。私があなたをイメージしてつくったオルゴールよ。」


「ありがとう、一応受け取っておく。」


私はカバンの中にしまい、外を眺めた。


しばらく沈黙がながれた。


少し時間がたち、メルノアが口を開いた。


「私、あなたのことが好きだわ」


その瞬間に彼女は眼を閉じ、キスをしようとした。


周りに人はおらず、私たち二人だけだった。


私はメルノアとキスをしそうになったが、彼女が照れだしたせいか、頬のほうにキスをした。


「お口はいつかにお預けね」


わたしはメルノアの目をそらしつつ、船を出るまでは顔を合わせないでいた。


船から降りた瞬間、あたりは完全に暗くなり、私たちは商店が立ち並ぶ道を歩いていた。


「ここに思い出が?」


「うん!お母さんとお父さんで一緒によくお買い物してたなぁ」


ふーん、なかなかいい場所だな。まるで私が貧乏ではなかったとき、祖国がまだ平和だった時によく歩いていた場所に似ている・・・


「でもね。誰かに殺されちゃったわ。お母さんは、オルゴール屋で看板娘、お父さんは元々、外交官をやってたの。」


「カーナ・エルビアって名前だったわ。良い名前でしょ」


私は名前を聞いた途端に背筋が凍った。


私が昔、最初の任務で暗殺した外交官ではないか。

その外交官はテロリストで、私の祖国をこわした張本人である。

彼を処分する・・・それも目的の一つだったのだ。


なのに、私が殺した人の娘がメルノアだったとは。


「・・・・・・」


「ナーヤ?」


「悪い、しばらく一人にしてくれ」


私は彼女を置いて、少し遠くの場所まで走った。


私は彼女の人生をこわした、彼女にとって大切な両親を傷つけた・・・私は最低な最悪な人間だ


私はうつろな目をしながら、彼女の家に戻った。


窓からはとてもおいしそうなにおいがした。


「ナーヤ!どうしたの?!心配したんだから!」


「別にいいだろ・・・」


「なんでもよくない!私はあなたを愛しているの・・・あなたがいなくなったら、私は・・・」


「ナーヤ、愛しているわ。いつかは地中海の海辺で結婚式を挙げたいくらいあなたは?」


私は彼女の両親を殺した張本人だ・・・・・・


私は・・・・・・


「私のことを愛しているの?」


「愛していない。すまない」


そう言うと、メルノアは悲しみと動揺が共存しているような表情を浮かべた

「あなたなんてもう知らない!出てって!」


私は君を・・・メルノアを二回も傷つけてた・・・


私は昼にあれだけ賑わって人がいなくなったのに、夜中なのか、閑散としている。


私は行き先もなくただ歩いていると・・・


その瞬間に、銃声が聞こえた。


「ここまで追い詰めたぞ」


私は撃たれた。


意識が朦朧としていくなか、鞄のなかから、彼女から貰ったオルゴールを取り出した。


音は彼女みたいに暖かく、心地よい曲が流れた。


これでよかったんだ。でも、もっと彼女のことを抱きしめたかった。もっと彼女に対して素直になっていれば・・・両親のことを殺さなければ・・・本当は、最後に愛していると言いたかった。


オルゴールから彼女との思い出が流れてきた。

後悔を包み込むかのように音色がそれらをかき消していく・・・


さようなら、メルノア





3年後・・・


メルノアは相変わらずオルゴール屋を経営しており、中は常連さんでにぎわっている。


「まだかしら。戻ってきたら、仲直りして、結婚式でも開きたいわね。私はいつでも待っているわ。」

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