憧れが焦げついても


 高校生漫画家、がっ君先生。私の彼氏だ。付き合って判明したワケじゃない。ずっと彼に憧れ――追いかけてきたから。

 一ファンとして、握手会に行きたい気持ちも分かる。

「がっ君先生、大好きです」

「先生の作品、愛してます」

 そんな声が聞こえた。ファンが増えるのは嬉しいのに。ズキズキ胸が痛い――。






「お疲れ様、がっ君」

 にっこり笑って、私は彼にハンドマッサージをする。

 石鹸で洗い、アロマオイルをすり込んで。

 私って、重い女だ。他の子の憧れはその場限りにしたい。

 憧れ続けたら、この気持ちが焦げついた。それなのに、がっ君は、そんな私を全肯定するように、抱きしめて――。


(ズルいよ)

 そんなの、もっと好きになるに決まってるじゃん。




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