第5話 男子部員のはなし⑤
あの日からしばらく彼女とは顔を合せなかった。多分大会が近くて練習試合も増えたから裏方の仕事が忙しいんだと思う。アキラの言ったことが最初は気になっていたけど、上手くなれるなら理由なんてなんでも良いかと思うようになった。折角教えてもらうんだからせめて一試合だけでもコートに立てるようにならないとな。
数日振りに秘密の場所に顔を見せた彼女とまた一緒に練習をしたけど、以前とは違って少し内容が難しくなってきた。練習のレベル一段上げたからと笑って言われたけど、ちょっと付いて行くので精いっぱいなんですけど。
「当面の目標は試合に出ること。めざせレギュラー!」
一試合どころかレギュラーを要求された!
「最終目標は全国だけど、キミ下手っぴだからまずは武器を見つけないとね」
思いもしない最終目標を掲げられて固まっている俺をよそに、レシーブもまだまだだしスパイクは威力がしょぼいし…と思案を巡らせている姿を見て、ふと中学時代の彼女はこんな感じだったんじゃないかなと思った。下手っぴの俺をレギュラーにするために何をすればいいのか考えることを楽しんでいる。
アキラみたいな才能はないと思うけど、俺を一人前のプレーヤーにすることに楽しみを見出したのなら、それは俺にとってもラッキーなことで遠慮も謙遜も必要ない。全力で乗っかって最終目標を達成するまで走り続けるだけだ。
柄にもなく静かな闘志を燃やしていると「筋トレやロードワークも増やした方が良いね」ととてもとてもハードな練習メニューを提案してくれた。
「…これ全部するの?」
「うん、キミ下手っぴだからこれくらいしないとね」
当面の目標はこのメニューを完遂することだな…。
とあるバレー部員の話 Ayane @tenn1027
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