IFストーリー 32話途中から

「終わりよ!もう抵抗はやめて」

既にエミーラの周囲にいた無人機は全て仲間が撃墜してます。

[そうね…]

「じゃあ、私達と共に平和な世界を作りましょう!」

[甘いわね、由華音]

その時、一筋のビームがエミーラの頭部を貫く。そして、アルテミューナがやってきた。

「アルテミューナ?リーザさん、どうして?」

[久し振りね、アイリス。貴様が奪っていったファイルーテオンは返してもらった。これはその礼よ!]

アルテミューナはエミーラを蹴り飛ばし、高速戦闘ユニットシリウスを水平に展開すると、赤い部分が開き、エネルギーをチャージし始める。

(あんな所にビーム砲が?)

[リーザァァ!私が!必ず…]

[消えなさい]

そして、極太のオレンジのビームが発射され、エミーラは光に呑まれていく。

その様子を見ていた私は一歩も動けずにいた。

「リーザ…さん?」

[由華音、あなたは私の予想以上に役に立ってくれた、感謝してあげよう。ファイルーテオンも奪還出来たしね。アイリスさえ居なければ、ラツィオに怖いものなど無い。間抜けな嘘をついてまであなたを導いた甲斐があったものよ。もっともあなたが用済みとなった今、あなたのようなラツィオ軍を裏切った下等な人間がいるだけで不愉快だわ。アルグ共々消し去ってあげる]

リーザはそう言うと、何処かへ飛び去っていった。

「っ!待って!」

傷付いたフィオレンティーナでは追いかけることもままなりません。

「まさか、リーザさんが…」

「お姉さま…」

イラストリアスに帰投した私は機体を降りる。

「由華音、大丈夫か?」

「アブレイズさん…」

キャットウォークにはアブレイズがいた。

「リーザの件に関してだが…」

「ちょっと、衝撃が強すぎて、気持ちの整理がつきません」

「そう、落ち着いたら話をしようか」

「お姉さま、私はちょっとやる事があるので離れますね」

「うん…」

格納庫から出て、自室へ向かう。いつもと違う雰囲気を出しているからか、すれ違っても誰も話しかけてこない。

自室に入り、椅子に座ってるとアヤが珈琲を持って入ってきます。

「お疲れ様です、ヴァンテージさん。…姉さんの事ですが」

「アヤ、心配かけたね。うん、分かってる、リーザさんは、アルテミューナは私が撃墜する」

「無理をしなくても…」

「ううん、これは部下である私がやらないと。それより、フィオの修理を」

「分かりました」

フィオレンティーナの修理には時間が掛かるだろう。その間、私は乗る機体が無い。アルテミューナはリーザが持っていってしまったし、新型はまだ建造中だし。

「暫くはブリッジ勤務かぁ」


半年が経ち、ラツィオはリーザが戻った事により立て直した。

アルグも一つとなったがラツィオの勢力も前大戦ぐらいまでになっている。

戦力増強の為、アヤの専用機、シェミリールミューナも突貫で建造し、完成、残るは最終調整のみとなっている。

フィオレンティーナは修理中だが、電気系等は高電圧により、操縦系統の配線が焼き切れており、千切れた右足は回収が困難で、更にジェネレータがある関係で、どちらも修理が難航している。尚、原理は不明だが、瑞穂の意思では普通に動くので駆動系には問題ないとの事。なので、右足はジェネレータの無い動く仮の脚部が付いている。

私は今、イラストリアスの格納庫にてアヤがシェミリールミューナの最終調整をしている所を見学している。

「私、演習ではリーザさんに一度も勝ってないのだけれど、勝てるかなぁ…」

「フィオレンティーナとアルテミューナでは飛行ユニットが違います。なので単純な性能では比べれません」

「それはそうだけど…」

リーザは正面からの戦闘を嫌う。その為、奇襲に気を付けなければならない。

「フィオレンティーナも高速戦闘ユニットを付けるしかないのかな」

「アルテミューナを撃墜するのは例え、フィオレンティーナを改修した所で一筋縄では行きません。パイロットの腕も必要です」

「そうだよね。それに、単機でくるとは思えないから」

「そうです、部隊で挑む必要があります。個々の練度を鍛える必要があります」

リーザは私をアルグと共に消し去ると言っていたのでイラストリアスもミューンズブリッジ基地も標的に入っているだろう。私の大切な仲間を守る為にも、アルテミューナを、リーザを撃墜 しなければならない。

リーザはファイルーテオンを奪還したと言っていたので、恐らく例の無人機を使うだろう。あと、何機残っているか分からないが、再生産される可能性も考えておかなければ。

「残りの新型機はいつ完成予定なの?」

「アイレミスティーナは1年以内。レックスティーナは半年ぐらいですね。追加生産となると、1機につき、1年は必要です。アルマスなら半年で10機出来ますが…」

「1年か、長いなぁ」

リーザが2年も待ってくれるとは思えない。

「攻めてきたら、守りきれるか」

「その時はシェミリールミューナを使ってください。スペック上は互角以上です」

「ありがと、アヤ。フィオの修理が間に合わない時は使わせてもらうね」

「はい」

アヤと別れ、ブリッジへ行く。今は停泊中なので、ブリッジにはラストフィート姉妹しかいない。

「あ、ゆかみん!何かよう?」

「いえ、特には」

「現在、ラツィオは動きがありません。ファイルーテオンもブルーフォレスト付近を飛行中です」

「いや、別にリーザさんの動向を知りたいわけじゃ…」

「顔に書いてありましたよぉ?」

この姉妹には敵わないな。

それにしても、ファイルーテオンがその付近に居ると言う事はラツィオはブルーフォレスト基地を復興させつつ、私を待っているかのようだ。

「そう言えば、リーザさんがファイルーテオンを奪い返したって言ってたけど、ファイルーテオンって難攻不落の空中要塞じゃなかった?」

「そうですね、なので過激派は全軍総動員して奪いました。結果は奪うのが精一杯だったようで。因みに当時、防衛任務してたリーザさんに殆どのアルマスが撃墜されてます」

「めちゃくちゃ強いじゃん。因みにその時、リーザさんは何に乗ってたの?」

「両軍の戦闘記録によりますと、XJL-9/2、フィオレンティーナ、バックパックは高速戦闘ユニット、シリウスです」

「フィオレンティーナにシリウス…だからリーザさんアルテミューナを早々に使いこなせていたのね」

これで、リーザがアルテミューナを練習も無しに動かせる理由がわかった。

「型番的に私の後だけど、リーザさんってその前に退役したって…」

「ラツィオのデータベースによりますと、由華音さんを庇った後、実際は大きな怪我をしておらず、異動となり、フィオレンティーナを受領、ファイルーテオンの防衛部隊に組み込まれたようです。そして、ファイルーテオンの防衛に失敗し、奪還任務をするためにアルグにスパイとして潜入、ファイルーテオンを位置を特定、奪還する機会を伺っていたようです。そこに由華音さんがやって来て、上手く誘導し、ヴィラージュ大将と戦わせるよう、仕組んだようですね。そして、ヴィラージュ大将のいなくなったファイルーテオンを強襲、強奪したようです」

「まんまと利用された訳か」

リーザは狡猾だって分かっていたのに、普通に信じてた自分が馬鹿みたいだ。

「因みにリーザさんのフィオレンティーナですが、ファイルーテオンにあるそうです」

「そのフィオレンティーナを奪えないかなぁ?」

「無理だと思うよー?防衛装置も多いし、ハッキングも厳しいし」

「シレアでも無理なのね」

「はい、そもそもファイルーテオンはハッキングを警戒してて、内部からしか、システムに干渉できないんです。遠隔で飛んでる訳じゃないので」

「一度UAVでぇ、偵察に行ったらぁ、レーザー撃たれました。それにぃ、無数の無人機とぉ、リーザさんがいるからぁ、接近するだけでもぉ、困難なんですぅ。由華音さんは何か知っていますかぁ?」

少し考え込む。そもそも私はファイルーテオンがラツィオの物とは思わなかった。

「ファイルーテオンってラツィオ軍の中でも総司令官に近い立場の人達しか情報を共有されてないようだったから、私は無人機の事以外知らないのよね。ましてや奪われたなんて公に言えないし。つか、リーザさんそんなに強いんなら何故、あの時、エリーゼを倒さなかったのかしら?」

「それは、恐らくファイルーテオンの所在が分からなかったので、あえて負けて泳がせたのかと」

「リーザさんらしいわね」

「っで、どうするのー?ゆかみん。リーザっちと対決するの?」

「待っていると、被害が大きくなりそうだから、こっちから出向いてあげましょうか。リーザさんも待っているだろうし」

フィオレンティーナは万全では無いがアヤがシェミリールミューナを貸してくれるので、間に合わなかったら使わせてもらおう。

「よし!準備が出来しだい、ファイルーテオンへ!」


数日後、補給が完了したのでブルーフォレスト基地へ向かう。フィオレンティーナは修理が間に合わなかったので、シェミリールミューナを借りる事にする。

「ヴァンテージ大佐、もうすぐでブルーフォレスト基地付近の海域です」

「ん、了解。ファイルーテオンに動きは?」

「ありません」

「そう」

本当に私を待っているのだろうか。だとすれば行った方がいいのだろうか。

「じゃあ、私達は偵察しに出撃する。ダンフリーズ艦長、船を頼むね」

「了解、気を付けてこい」

「分かってる」

更衣室でパイロットスーツに着替えると、アヤが入ってくる。

「ヴァンテージさん、準備はいいですか?」

「大丈夫よ、行きましょ」

格納庫へ行き、シェミリールミューナに乗り込む。今回は私がメインパイロットをするので、アヤが前に座り、私が後ろに座る。

「では、起動させます」


【こんにちはー!】


起動すると同時にコンソールのホログラムに何処かの制服を着た少女が現れる。

「アヤ、この娘は?」

「機体をアシストするAI、名前はシェミ。フィオレンティーナで言う、瑞穂さんのような方です」

「なるほど。可愛いね」

台座が動き、甲板へ出る。

[シェミリールミューナ、射出準備完了しました]

「了解、アヤ」

「何時でも大丈夫です」

「それじゃ、発進する!」

スロットルを全開にし、上空に出て、ある程度の速度になったので変形させる。

「変形っていっても、翼が展開する位なのね」

「あまりにも複雑ですと、整備や修理に余分なコストがかかりますから」

「そうなのね」

今回は偵察なので僚機は連れていかず、シェミリールミューナのみとなっている。

変形してから大分飛んでいるがラツィオ軍には動きはない。

「静かね、罠かしら?」

「分かりません、慎重に行きましょう」

ブルーフォレスト基地に近付いているものの、リーザは処か、防衛部隊すら出てこない。

「変ですね、この距離なら警告してくるはずですが…」

[ヴァンテージ大佐!至急、ブルーフォレスト基地から離れてください!大量の放射線反応を感知しました!尚、イラストリアスは巻き込まれぬよう、該当海域から最大戦速で撤退中です!]

「何だって!?」

「姉さん、ヴァンテージさんただ一人を消すために、基地一個を爆発させて葬るつもりなのね」

最大推進状態リヒートにし、旋回する。

「ヴァンテージさん!進行方向に多数のアーヴィングが!」

「被爆のリスクのない無人機で足止めさせるようね。突破するよ!アヤ!」

「分かりました!」

全速力のまま、回避をしつつ、イラストリアスを目指す。

「アヤ!イラストリアスの方向は?!」

「4時方向です!」

無人機は射線を調整し、私達をイラストリアスから遠ざけてるようだ。それにしても、本気で此方を狙ってないように感じる。爆発に巻き込ませたいなら基地の方向に誘導させるのが普通だが、これでは基地から遠ざけているだけである。

「このままでは、イラストリアスへたどり着かない…」

「ヴァンテージさん、一旦、無人機を振り切りましょう!」

「分かった!」

そして、何とか無人機の弾幕を掻い潜り、何もない海上へ出る。

「ヴァンテージさん、推進剤が半分を切っています」

「リヒートを使いすぎたね。何処かに着陸出来る場所はある?」

「シェミ、周囲に島は?」


【3キロ先に島あるよっ!】


「じゃあ、そこに一旦着陸しよっか」

「了解」

島が見えたので変形し、低空飛行する。

「森の中に機体を隠しましょう。そのためにもシェミリールミューナは暗い色をしています」

「成る程ね、了解」

機体を着陸させると、姿勢を低くして、見つかりにくくさせる。

「はぁ、疲れた…」

電源を落とし、ハッチを開け外に出る。上空から見えた感じだと、無人島のようだ。

「ダメですね、イラストリアスと繋がりません。妨害電波があるようです」

「遭難信号を出せばいいんじゃ?」

「姉さんに気付かれる可能性が」

「それはまずいね」

ただでさえ、誘導されて位置がバレそうなのに余計な事をして、囲まれたら大変だ。

「どうしよう」

「私達が飛んだ方向を計算して、向かって来てる可能性を信じましょう。なので待つのも策の一つです。帰還出来ない可能性に備えてシェミリールミューナには1週間分の食料と水があります。それに、生命維持モードを使えば電力消費を最低限にできます」

「分かった」

タッチパネルを操作し、生命維持モードにする。すると、照明と全てのモニター消え、空調とホログラムに残りの電力表示だけが稼働してる状態になる。

「残り80パーセント。さて、リーザさんとイラストリアス、どっちが先に来るかしらね…」

「ヴァンテージさんは休憩しててください。警戒は私がしておきます。代わりに戦闘になったらお願いしますね」

「分かった。じゃ、ちょっと寝てるね。アヤも交代してもいいからね」

「分かりました」


4日が経ち、機体の中で仮眠していると、アヤの声で起きる。

「ヴァンテージさん、遠くに機影が見えます」

シェミリールミューナは機体から発生する熱源を感知されないよう、電源は切っているのでレーダーは使えない状態です。なので、識別は出来ず、肉眼で判別するしかありません。

「機種は?」

「…アルテミューナです!」

「やり過ごせる?」

「…真っ直ぐ此方に来てますので分かりませんが…」

すぐ上をアルテミューナが高速で通りすぎる。

「ばれてないようね」

「いえ、そうとも限りません。機体に乗り込みましょう」

機体に乗り込んだ瞬間、ミサイルがシェミリールミューナ付近に着弾する。

「遂に見つかったようね、迎撃するよ!」

「分かりました…」

シェミリールミューナを起動させると、アルテミューナから通信が来る。

[探したわよ、由華音、さぁ、引導を渡してあげる]

「リーザさん…いやリーザ、私が信頼してた貴方はもういない、敵となるなら、撃墜する!」

シェミリールミューナを立ち上がらせ、スラスターを吹かし、アルテミューナと対峙する。レーダー反応を見ると、敵性勢力を示す赤となっている。

[さぁ、あなたの腕を見せもらいましょうか!]

アルテミューナは高周波ミドルブレイドを持って襲いかかってくる。

「どうしてもやるというのね」

ミドルブレイドをショートブレイドで受け止め、蹴りを繰り出すが、アルテミューナも蹴りをし、受け止める。

「変ですね…姉さんなら一撃離脱すると思ったのですが…」

確かに、演習の時は一撃離脱をしていたが、今はミドルブレイドによる接近戦をしている。私もそう思ったがアルテミューナの猛攻を凌ぐだけで手一杯だ。しかし、その剣筋はどれも腕や足を狙っているように感じる。まるで、撃墜したくないかのように。

[どうしたの?由華音、私を撃墜するんじゃないの?それとも、それが全力?]

「くっ!まだまだよ!」

ミドルブレイドを弾き、ロングブレイドでアルテミューナのライフルを切る。アルテミューナはライフルを捨てると、シェミリールミューナの右腕を掴み、頭突きをしてきた。

[ねぇ、由華音、私の元に戻って来ない?今なら私の権限で罰を軽くするから]

「私は、戻らない!」

[そう、残念だわ]

リーザがそう言った瞬間、剣筋がコックピットを狙ってくるようになった。

「さっきまでのは牽制だったのね!」

アヤは連日、夜通しで警戒してたせいか、機体が激しい動きをしてるのにも関わらず、うとうとしている。

「アヤは私が守らないと」


【推進剤の量が残り僅かだよっ!】


シェミの言うとおり、推進剤の残量が少ない。

しかし、補給は出来ず、シェミリールミューナはこれ以上、戦闘してる余裕が無い。

「隙を見て着陸しないと」

アルテミューナのミドルブレイドを弾くと両足で押し出す様に蹴る。アルテミューナとの距離が空いたのでその隙に島に着陸する。

[あら?由華音、どうしたの?そんな所にいないでこっち来なさいよ。それとも疲れちゃった?変わらないわね、由華音は]

嘲笑うリーザの挑発に乗らないよう、冷静を装うが無意識にレバーを強く握ってた。

「リーザ、私達が補給してない事を知っているでしょうに…」

[そろそろ、可愛い部下とお別れの時間ね]

すると、アルテミューナがエミーラを葬ったビーム砲を展開する。

[さよなら、由華音]

今のシェミリールミューナは推進剤が殆ど無く、あの極太ビームを避ける術がない。

アルテミューナがチャージ中、スナイパーライフルを撃つが、無人機が射線に割り込み防がれる。

「万事休すか…ごめん、アヤ」


"ダイナマイトキーック!"


「え?」

突然、瑞穂の声が聞こえたと思ったら、フィオレンティーナが飛び蹴りをし、アルテミューナを蹴り飛ばす。

[お姉さま、アヤさん、大丈夫ですか!]

「雛子?フィオレンティーナに乗ってるの?」

[はい!瑞穂ちゃんが教えてくれました!]

[き、きさまぁぁっ!]

アルテミューナは海面ギリギリで立て直し、ホバリングしている。それにしてもあんな激昂しているリーザは初めて見た。

[邪魔をして!貴様から殺してやる!]

[ヴァンキッシュ中将、落ち着け]

[アブソルートミューナ!ウィンスレット総帥…]

アルテミューナの背後にいつの間にかもう一機いる。

「あれが、ラツィオ総帥…それに、あの機体、私の知らないティーナシリーズなの?」

大まかなデザインはフィオレンティーナに似ているが、見たことがない。

[そこに居るのは、ヴァンテージ大佐か]

「…だから何ですか?私は、戻らないよ」

[何があったかは知らないが、ディザータは排除するのみ。それがラツィオの掟だ、いずれ、貴殿も排除する。ヴァンキッシュ中将、増援がくる、撤退だ]

[了解…]

アルテミューナとアブソルートミューナは撤退してく。

「…イラストリアスは渡さないし、皆は私が守る」

[お姉さま、大丈夫ですか?帰還できますか?]

「あ、うん、大丈夫」

[もうすぐイラストリアスが来ますので、待っててください]

数分後、イラストリアスが来て島の沖合いで停泊する。

[ヴァンテージ大佐、これ以上は座礁する可能性がありますので近付けません。ここまで飛べますでしょうか?]

「多分、行けると思う」

シェミリールミューナを離陸させ、沖合いにいるイラストリアスを目指す。そして、イラストリアスに着陸した瞬間、推進剤が切れる。


【推進剤切れちゃった、もう飛べないよ】


「分かってる、シェミ。アヤ、起きて」

「んぅ?」

寝惚け眼のアヤを起こし、ハッチを開け、外に出る。

「お疲れ様です!ヴァンテージ大佐!インテンス大尉!」

「お疲れ様」

「シェミリールミューナ、お願いしていいですか?」

「了解しました」

イラストリアスの甲板を歩き、部屋を目指す。アヤは相変わらず眠そうなので、早く寝かせてあげなければ。

振り向くとシェミリールミューナは量産機に抱えられ、格納庫へと、運ばれていく姿が見えた。

「アヤ、暫く休んでいて」

「すみません、ありがとうございます」

アヤを部屋に入るのを見送ると、私も自室で休憩する。

「はぁ、やっぱ自室は落ち着くな」

椅子に深く座る。いつもならこの時間

はアヤが珈琲を持ってきてくれるが、寝ているので、自分で用意する必要がある。なので椅子から立ち上がろうと思った瞬間、誰かが扉をノックした。

「ん?誰かな?入っていいよ」

「失礼します、ヴァンテージ大佐、珈琲をお持ちしました」

フェルテが珈琲を持ってやってきた。

「あ、ありがとう。でも、どうして分かったの?」

「インテンス大尉から連絡があり、ヴァンテージ大佐がそろそろ珈琲を欲しがる時間だと聞いております」

「そう言うわけね…」

寝不足なのに、私の珈琲の時間を覚えているなんて。

「せっかくだから、一緒にどう?雛子も居ないから一人じゃ寂しいし」

「で、ではお言葉に甘えて。自分の分を持ってきます」

フェルテは一旦、部屋を出ると、すぐに珈琲を持って帰って来た。

「さ、一緒に飲も。確かここにお菓子が…」

「はい」

珈琲を飲んだ後、フェルテはブリッジへ戻ると、部屋は私一人となる。

「そう言えば、あの機体について調べなきゃ」

一旦、格納庫へ行き、シェミリールミューナのメモリーカードを抜き、自室に戻ってPCに読み込ませる。そして、シレアがハッキングして得たラツィオのデータベースの中から同じ画像の機体を探しだす。

「データが多い…探すのが大変だ」

探すこと10分、目的のデータを見つける。強固なプロテクトがあったが、シレアから貰った解除アプリで難なく解除します。

「形式、XJL-16、アブソリュートミューナ。レックスティーナの後に設計されてるのね。しかし、既に完成してるあたり、早い段階で建造してるのか、それとも。…それにしても雛子は何処にいったのかしら?」

フィオレンティーナは帰投してるので艦内にはいるはずですが。

「お姉さま!戻りましたー!」

「噂をすればなんとやら」

「へ?」

「何でもない、おかえり、雛子。何処にいたの?」

「えへへ、ちょっと、瑞穂ちゃんと話してました」

「だから、遅かったのね」

瑞穂も私の考えが読めるなら教えてくれたっていいじゃないかと思う。


”ごめんねー話すのに夢中で忘れてた"


まぁ、瑞穂も雛子も年頃の少女だし、会話が盛り上がるのはしょうがないが一言欲しいものだ。

「それで、私を探してた様ですが何か用ですか?」

「いや、帰投してから姿見えないと思って。因みに用はない」

「あ、そうなんですか」

また、洗脳されてどっか行ったのかと心配してたが、姿を見て安心しました。


"素直じゃないな、由華音は"


「うるさいよ、瑞穂」

「え?何か言いました?お姉さま」

「ううん、何でもないよ」

心で思ってたはずだが、言っててしまったようだ。瑞穂はその様子が面白かったのか、笑っている。

それにしても、眠気がやってくる。理由はアヤが警戒してくれてたとはいえ、直ぐに起きれるよう、仮眠程度だったからでしょう。

「ミューンズブリッジ基地につくまで、ちょっと寝てようかな」

「遭難して、お疲れですもんね。何かありましたら私がフィオで迎撃しますよ!」

「ありがと、じゃ、頼むね」

雛子が出ていくと、私はベッドに横になった。


何時間寝ただろうか、誰に起こされる事もなく自然に起きる。

「よく寝たな」

時計を見ると、2時間寝ていたようだ。

「さて、ブリッジに行かなくては」

着替えて部屋を出る。ブリッジに入ると初老の男性が此方を見る。

「ヴァンテージ大佐、休憩はもういいんですか?」

「大丈夫よ、ダンフリーズ艦長。状況はどう?」

「周囲に敵性反応無し。後、2時間程でミューンズブリッジ基地に到着です」

「了解。急いでいるわけじゃないし、ゆっくりでいいよ。それより、すまないね、探すの大変だったじゃない?」

「いえ、フィオレンティーナが教えてくれました。ただ、遠すぎて到着が遅れましたが」

「問題無いよ。イラストリアスってそんなに速度出ないでしょ?」

大型空母であるイラストリアスは通常の空母より速度が出ない。それ故に装甲や防衛機能が優れている。

「ご理解頂きありがとうございます」

「それより、ダンフリーズ艦長はリーザさんの事はどう思います?」

「ふむ、リーザか。あの性格を考えると不自然な事ではない。そうだな、何故、リーザがああなったのは、私に原因がある」

「ダンフリーズ艦長に原因が?」

「あぁ、あれはリーザが部隊長になって1年たった頃だな。あの頃のリーザは今とは異なり、他の部隊と連携をとっていた」

「最初からあんな性格じゃなかったんですね」

「あぁ、ある日、リーザは敗走してきて部隊が壊滅、仲間を失った事を嘆いた。その時、私はこう言った。これが戦争だと。戦争はスポーツの様に、ルールは無い、時には卑怯な手段も必要だ、そう私は教えた。それ以降、リーザの戦い方は変わった。他の部隊は重視せず、自分の部隊の損害は少なく」

だからいつも全員で生きて帰って来たのか。

「いつしか、他の部隊と連携をする振りをして、自分達は安全な所から攻撃するようになった」

「確かに、私が在籍してた時はそんな感じでしたね」

「だから、リーザがスパイだとは驚かんよ」

「ダンフリーズ艦長…」

「話が長くなったな。そろそろ着く時間だ」

「聞かせてくれてありがとう、ダンフリーズ艦長」

「礼には及ばん」

イラストリアスを降りてアブレイズの所へ行く。

「やぁ、よく来たね」

「アブレイズさん…」

「分かってる、リーザの事だね?僕も何とかしようと思っているが、相手は聞く耳無しだ」

「そうですか。分かりました、大丈夫です、決心はついてます」

「あぁ、それと、新型機が後少しで完成予定だ」

「早いですね」

「24時間体制で建造してるからね。それと、君の戦闘データを移すから、近々フィオレンティーナをちょっと預かるよ。後、試運転の為に相手を用意したから、広場に行っておいで」

「分かりました」

数日後、フィオレンティーナを基地の格納庫へ移す。作業は10分ぐらいで終わるらしい。

「それじゃ、よろしくね」

フィオレンティーナを預かっている間、ラストフィート姉妹の家に招待されているので向かう事に。

「やっほー!ゆかみん!さぁ!始めようか!」

「まだ、諦めてなかったのね…」

「こてんぱんにするまでやるよー!」

結局、勝負は引き分けとなり、イレアが悔しそうにしてたが、呼ばれてしまったので格納庫へ向かう。

中に入るとシャウラが出迎えてくれる。

「お待ちしてました。此方です」

シャウラに着いていくとそこにはフィオレンティーナと似たような機動兵器が5機もある。

「5機共完成したのね」

「はい、ヴァンテージ大佐のは此方の機体、フィオレンティーナ・ネクサス。そして、これが機体の鍵です」

シャウラから携帯端末を受け取ると、説明を聞き、機体のハッチを開けて中に入る。

「コックピットはシェミと一緒なのね」

メインシートに座り、指定の場所に端末を置くと機体の電源が入る。


"XJL-13/1 Fiorentina Nexus"


【やっほー!由華音】

ホログラムに瑞穂が現れる。

「瑞穂!貴方もこっちに来たのね!」

【うん!これからもよろしくね!それじゃ!セットアップしとくね!】

「よろしく、瑞穂」

私の癖を知っている瑞穂なら問題無いだろう。瑞穂がセットアップを終わらせると機体を動かし屋外へ出る。

「機体は問題無し。アブレイズさんが広場で模擬戦してくれる人がいると言ってましたが…」

広場に行くと、そこには旧フィオレンティーナがいます。

「フィオ?まさか…」

[やっほー!お姉さま!]

「やっぱりね」

[旧型ですけど、お姉さまには負けませんよ!]

「雛子こそ前みたいに手加減してーって言っちゃだめよ?」

[あ、あの時は記憶がなかったから!今度は負けませんよ!それに、そのバックパックじゃ、満足に動けないでしょ!]

私が乗っているネクサスはバックパックは高速機動ユニット、ベガが付いている。このユニットは空中では強いが、地上ではデッドウェイトとなってしまう。対して雛子のフィオは軽量で邪魔にならないエールユニットだ。

「まぁ、雛子には?これくらいハンデがあった方がいいんじゃない?」

[言いましたね!負け惜しみなんて聞きませんよ!]

結果は僅差でネクサス勝った。やはり、バックパックが枷となったが、フィオの方も出力が半減しているのと、仮設の足が満足に動かなかったらしい。

「なかなか雛子もやるじゃない」

[フィオだって、まだまだやれますでしょ?]

ネクサスと互角ならフィオを予備機として、使えるだろう。まぁ、機動兵器は車と一緒で基礎の部分は殆ど変わらず、フレームの強化、高出力高効率化、ハイテク化がメインなので、フィオレンティーナ・ネクサスは旧フィオレンティーナと比べてジェネレータの高効率化と駆動ロスの軽減、関節の強化と可動範囲の拡大、後は軽量化ぐらいなので、劇的には性能はあがっていないのだが。

「それじゃあ、雛子はフィオに乗る?」

[うーん、そうですね、数が必要な場合ならいいんじゃないですかね]

別にフィオもネクサスも一人で性能は100%出せるので二人で乗る必要は無い。ただ、どちらも二人の方が120%ぐらいの性能が出せるだけだ。

「まぁ、今後の事は後から考えるとして、イラストリアスに戻りましょ」

[はい!]


数日後、ファイルーテオンがミューンズブリッジ基地に向かってきているとの報告を受け出撃準備をする。

[偵察中のアヤさんから連絡です。アルテミューナ他、アーヴィング1000機が向かってきているようです]

「かなりの数ね。イラストリアスの防衛能力は信じてるけど…」

[ゆかみん、疑ってる?ならば宣言しよう、イラストリアスは無傷にしてみせると]

「あ、うん、期待してるね」

「お姉さま、発艦準備完了ですよ」

「りょーかい。フィオレンティーナ・ネクサス、テイクオフ!」

機体を上昇させ変形し、先行する。後方では、イラストリアスから続々と機体が発艦され、着いてくる。

今回はシェミ2番機のスイハ、ロジェはイラストリアスから援護、その護衛と部隊の指揮をレックス1番機のツカサ、イラストリアスの防衛に遠距離はショット部隊、近距離にアタッカー部隊、護衛にシールド部隊を、突撃、陽動部隊にアイレのデヴィッド、レックス2番機のワトソン、アルマス部隊を編成。機動兵器の限界高度の更に上空をガンシップが待機状態。そして、私はアルテミューナを。

尚、シェミ1番機とは合流予定。

「ツカサさん!防衛部隊の指揮をお願い!」

[おう!由華音の帰る場所は死ぬ気で守るぜ!]

「デヴィッド!、ワトソンさん!アルマス達をよろしくね!」

[了解!一機も落とさせやしませんよ!]

[了解です、大佐]

「それと全機、相手は無人機よ、遠慮は不要!」

[[了解!]]

[今日は甲板から狙撃です。エネルギーも船から供給されるから撃ちたい放題ですよ、スイハちゃん]

[エネルギー無限だからって乱射はしないよ?ロジェ。だって今日の私は新型機を貰って絶好調なんだから!一発も外さないよ!]

[おぉー!スイハちゃんが自信に満ちあふれてますぅ!]

あの娘達、同じ機体に乗ってるのに何故通信してるのだろうか。

「スイハちゃん、援護、期待してるね」

[ほわぁぁ!ヴァンテージ大佐!?]

「貴方達、同じ機体なんだから通信する必要ないでしょ?」

[あ、そうでした]

「それとも、私とお話したいの?」

[えっと…]

「そっか、話したく無いのね。ちょっと悲しいな」

ちょっといたずら心で悲哀そうに言ってみる。

[そ、そう言う訳じゃ…!]

「冗談よ。さ、戦闘に集中しなさい」

[はい!]

最大推進状態リヒートにし、飛んでいると、前方から高速で接近する反応がある。

「前方から機体接近!適合した機体はアルテミューナです!」

「やはり、リーザさんが来たわね。挨拶にミサイルをお見舞してあげて」

「はい!お姉さま!」

すれ違い様にベガからミサイルを放つ。アルテミューナはそれを難なく全て回避していた。

[随分過激な挨拶ね、由華音]

「えぇ、久し振りに会いますのでちょっとね」

旋回し、アルテミューナを正面に捉えると、アルテミューナは変形して、ブレイドで切りかかってくるので、こちらも、ロングブレイドを持ち、受け止める。

[こうして、やり合うのは久し振りね]

「えぇ、リーザさんにこうやってきたえられましたから」

その後も何回かロングブレイドを振るうが、全て弾かれてしまう。

「流石に一筋縄ではいかないか」

一進一退の攻防をしつつも、隙を探ろうとするが、全く隙が無い。

そして、戦っている内にいつの間にか海岸に近づいていた。

「陸に近づいている?」

[何処見ているの?由華音!]

アルテミューナの蹴りをくらい、落下するが何とか体勢を整えて着陸する。

[やっぱり、殺すのは惜しいわね。どう?戻って来ない?]

「私にその気は無いって言ってるでしょ!」

[はぁ、頑なね。いいわ、こうなったら捕まえて洗脳するしかないわね。機体はいらないからコックピットだけ回収しましょうか]

アルテミューナの背後に無人機が6機、飛んできた。

「数で圧倒する気ね」

「どうしましょうか?」

「雛子、怖かったら逃げてもいいのよ?サブシートはベガで脱出出来るから」

これは雛子にはシャウラにお願いし、内緒で付けた機能。無論、メインシートからでも操作出来る。

「いえ、私も一緒に戦います!」

「ふふ、ありがと」

[相談は終わったかしら?]

無人機が一斉に動きだし、ミサイルを放ってくる。

「くっ!」

飛び上がりつつ、ガトリングでミサイルを迎撃すると、煙を貫いていてビームが飛んできた。

「やば!」

回避するが、右手のライフルに当たったので誘爆する前に捨てる。

「流石リーザさん、狙いは正確ね」

推進剤の容量も考え、高度を落とす。

[みーつけた!]

アルテミューナが高速で接近してきてブレイドを振り下ろしてくるので、後方に探るが、アルテミューナはそのまま振り上げて来たので回避しきれず、腹部のビーム砲をかする。

お返しとばかりにショートブレイドを振るい、アルテミューナの左腕を切る。

[楽しいねぇ、由華音!]

「えぇ!そうね!」

アルテミューナの回し蹴りが右手に当たり、ショートブレイドが宙を舞う。

そして、ブレイドがネクサスの左腕を切り落とす。

「しまった!ならば!」

残った右腕でアルテミューナの頭部を殴ると、ガトリングで脚を撃ち、距離を取ると、ミサイルを全弾放つ。アルテミューナは避けれず、着弾する。

「はぁ、はぁ」

煙が消えると、大破したアルテミューナが辛うじて立っています。

[ふふふ、由華音、強くなったね。…でも、油断は禁物よ!]

「っ!」

私はコンソールを操作し、雛子を脱出させる。

「お姉さま!何を…」

雛子が言い終える前にシートが下がり、シャッターが閉まる。そして、ベガがパージされ、飛んでいく。

反撃の手段の無いネクサスでは迎撃出来ず、回避も間に合わないのでせめて雛子だけでも脱出させる。

「これで、いいのよ」

四方から無人機が一斉射撃し、ネクサスに着弾する。凄まじい衝撃を受け、私の意識は途切れた。


気がつくと、視界は真っ暗だった。

「私はまだ…生きている?」

何も見えないので生きてる実感も無いが。

「雛子は…無事にイラストリアスへ…たどり着いたかな…」

ベガはパージ後、自動的にイラストリアスへたどり着くようになっている。だから大丈夫でしょう。

しかし、体を動かそうとしても、思うように動きません。

「そうだ、ベルトを外さなきゃ」

無理して腕を動かし、手探りでベルトを外す。外すして気が付いたがどうやら仰向けに倒れているようだ。

「リーザさんはどうしているかな…」

こんな時に戦った相手の事を思うのはどうかと思うが、やっぱり元上官で信頼してた人だから、心配になってしまう。

脱出する為、立ち上がりハッチを開けようとする。だが、力の入らない体では固くて開かない。

「あはは…私はここで死ぬのかな」

もう、何度口にした言葉か。ハッチにもたれ掛かると、突如開き、仰向けに倒れる。目に映ったのは星空と膝着いているフィオレンティーナでした。

「瑞穂?」

私がそう言うと、フィオレンティーナは頷きます。

「迎えに…来てくれたのね」


"うん!"


無理して立ち上がり、痛む右足を引きずりながらフィオレンティーナの元へ歩いて行くと、フィオレンティーナは手を差し伸べてハッチを開ける。そして、コックピットへと乗り込む。

「フィオに…乗るのは久し振りね」

コンソールを確認し、問題が無いことを確認すると、立ち上がらせる。

ネクサスを見ると、殆ど原型を留めていなかった。

「帰ったら怒られそうね」

アルテミューナも大破し、仰向けに倒れています。近づいて確認すると、ハッチが開いており、リーザの姿はありません。

「リーザさん、まだ生きているのね」

とどめを差さなかったのは、私がまだリーザに未練があるのでしょう。

すると、少し離れた所にもう一機のフィオレンティーナが着陸する。

[やっぱり、生きていたわね、由華音]

「リーザさん…」

[貴方があれくらいで死ぬとは思ってないから、留めを刺しに来たわ]

「まだ…やるの?」

[えぇ、ディザータは殺す。それが掟だから]

「そう、考えを改める事は無いのね」

[私はラツィオ、貴方はアルグ、それは、一生交わることの無い漸近線asymptote…。裏切った部下を始末するのは上官の役目なのよ]

「私は死ぬ気は無い」

[ならば、抗ってみなさい!]

二機のフィオレンティーナが同時に走りだし、ロングブレイドを抜刀すると、お互い切りあう。

[早く私を倒さないと、大事なお仲間が大変な事になるわよ?]

「何を…!」

[総帥相手に何分もつかしらね?]

「私は、仲間を信じる!」

リーザ機のロングブレイドを弾くと、腹部に蹴りを入れる。

[その信じてた仲間が全滅してるかもね!]

リーザ機がライフルを撃ち、ビームが右肩を貫く。

「そんな事は無い!だって、私の部隊だから!負けるはずがない!」

ロングブレイドを振り下ろして、リーザ機のコックピットの周辺を切り裂く。リーザ機も反撃とばかりにロングブレイドを振るい、フィオレンティーナの胸部を切る。

[貴方の姿を見るのは久し振りね]

「えぇ、私もです。リーザさん」

[でも、これで最後にするわ]

リーザ機がバックステップで距離をとると、ロングブレイドを構える。私も意図をくみとり、同じくロングブレイドを構える。

[さようなら!由華音!]

「リーザ!ここで留めを刺す!」

お互いに走りだし、ロングブレイドをリーザ機のコックピットに突き刺す。

だが、リーザ機のロングブレイドはコックピットを僅かに外していた。

[本当に…強く…なったね…由華音]

「リーザ…さん?どうして?」

切り裂いたコックピットハッチから、笑顔のリーザが見える。

[全ては…計画通り…]

「計画通り?」

[貴方の…障害になりうる…アイリスを消し…ラツィオの…無人機を…基地ごと消滅…させ、アブソルートミューナと…ファイルーテオンの…情報を……ごめんね…由華音…]

リーザ機はフィオレンティーナを押し退けると、激しく爆発する。

「待って!まだ聞きたい事が…」

私の声が虚空に響く。

[ヴァンテージさん!やりました!ファイルーテオン及びアブソルートミューナを撃破しました!]

「……」

[ヴァンテージさん?]

「あぁ、うん大丈夫。こっちも終わったよ。帰還するね」

[了解です!お待ちしてますね!]

フィオレンティーナを飛び上がらせてイラストリアスを目指すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生した世界が戦争中でした XFR @XFR

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ