オラストラン③『YELLOW』

第3話『YELLOW』


 放課後、今日はバイトがないのでダッシュで家に直行と思ったのだが(一緒に下校する友達など無論いない)。校門を飛び出てすぐ――見慣れた顔を見つけたので、キキィイィ! と、スニーカーをすり減らして急ブレーキを踏む。


「ゆん……」


「あ、陽ちゃ~ん」


 ゆんは誰かを探している様子だったが、俺に気づくといつものように、ぱっと花が咲いたような明るい笑みを浮かべて手をひらひらさせる。


「もう帰るの? 部活はどうした」


「ん? サボりだけど」


「当然のように言われても困るんだけどー」


 ジト目で俺を可愛く睨みつけるゆん。うん、いつものゆんだ。さっきの会話は水に流せということだろうか。まあいい、ゆんの可愛さが保たれるのならば、素直にノってやるか。


 だが、それよりも気になるのは……


「誰かを待ってたのか? ……というか、結構必死に探してるようだったけど」


「え⁉ あ、あー、え? べつにー? 誰も探してないけどねー?」


「じゃあなんでゆんがこんなとこにいるんだよ。お前、いつも友達とすぐに帰るよな」


「え、嘘。私のことそんなに見てて……じゃなくて! ねえ、そんなことはどうでもいいんだよー! えっと、さっきは……ほんと冷たいこといってごめんね?」


 え、唐突だな……。急な謝罪に不意を突かれる。どうやら会話をなかったことにしようという空気ではなかったらしい。


「ああ、あのことまだ根に持ってるのかと思ってたよ。なんか悪いこと言っちゃったかなーって。水に流すならもっと付き合ってあげてもいいけど、って上から目線で言ってる姿が容易に想像できたぜ。あーよかった。ゆんが反抗期にならなくて。俺、いつもそのサイドテールを凶器にして殺されないかなって震えてるんだぜ」


「うっ……うるさいっ! 私はあなたの幼なじみやってあげてるだけ! 反抗期とかそんなのもないし、殺したりなんかもしないから! ずっとこのままで……そう、ずっとこのままでいるんだから。だから本当に、今朝はごめんね」


「あー、いやなんか歯がゆいな。幼なじみだっていうんだったら、謝るのはやめてくれよ。あー、でもあれか、ああいうことになった理由とかまでは教えてくれない感じか」


「まあ……できれば」


「じゃあ聞かない。ごめんな。誰か探してたんだろ、邪魔して悪い」

俺がそう吐き散らして帰ろうとすると、


「待って!」


「え、」


 俺の二の腕をがっしり掴む感触があった。そして、そのままぐいと引き寄せられて、柔らかな感触に埋め尽くされる俺。どうやら彼女の頭も二の腕をぐりぐり擦り付けきているようだ。


「ち、ちょっと! 何するんだ!」


「私と、一緒に帰らない?」


 頭を少し俺の方に向けて、儚げな少女は言う。たった一言の、理解の容易い単純な言葉。それが複雑に感じるほど、俺の脳内はパニくっていた。腕を振り払ってさっさと帰ってしまおうかとも思ったのだが、彼女が頭を腕に擦り付けていることもあり、俺が乱暴に腕を動かすと少女を気付付けてしまいかねないのだ。


 少女――ゆんもそれを完全に理解していて、更に幼なじみであるからこそ、俺が自分を傷つけられないと確信しているのである。くっそ、生意気な幼なじみだ。今度、めちゃくちゃにしてやるからな……そのサイドテールを。


「わかった」


「うれしい」


 その簡潔な会話によって俺たちは何年振りかに一緒に家に帰ることになった。だれかを探してたんじゃないのかよ。俺なんかと帰ってほんとにうれしいのかよ。そんな不満を心のうちにしまい、俺たちは並んで歩きだした。

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オラストラン【AIのべりすと】 星色輝吏っ💤 @yuumupt

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