第43話 エピローグ2
「なあ、前田さんが男とデートしてたらしいぞ。近くのショッピングモールだとさ。ついに前田さんに彼氏が出来たんじゃないかと話題だよ」
BBQの行き道、駅で合流した阿部に話しかけられる。もう阿部が知るくらい話題になっているのか。
「まあ、男と遊ぶくらいあるんじゃないか? 彼氏と決まったわけでもないだろう」
「まあ普通の女子ならそうだが、前田さんに関しては男と遊んでいる様子が今までなかったからな。男女グループで遊ぶことすら珍しいという話だ。そんな中で2人で遊んでいた…… これはもう確定だろ?」
普通に買い物に行っただけだと考えていたが、思ったより大事件だったようだ。そこまでの話とは想像してなかった。
「相手はわかっているのか?」
「いや、前田さんを一方的に知ってる他校の女子の話らしくて、男の方は全くわからないらしい。それほどイケメンではなかったらしいということと多分同世代というくらいだな」
「…… まあイケメンかどうかは人によって違うからな」
「まあ、そうだが凄まじいオーラを放つイケメン、ではなかったということらしいぞ。意外と前田さんも普通の男の趣味をしているのかもな。なあ、お前と伊藤で前田の彼氏について調査してみるというのはどうだ? お前らなら特定できるんじゃないか?」
…… 確かに3秒で特定できるが、そういう問題ではない。
「他人の恋愛事情に口を出す趣味はないよ。自分で探ってみたらどうだ? なんなら今日聞いてみたらいいだろ?」
「俺がいきなり聞くのもなあ…… 距離それほど近いわけじゃないからな。お前から聞いてみてくれよ」
「嫌だ。興味がない」
「冷たいやつだなあ。山田に頼むか」
「おはよう」
途中の駅で山田と合流する。
「なあ、山田。頼みがあるんだが」
…… 阿部は俺にした話と同じ内容を山田に話す。
「うーん…… 相手かあ。誰なんだろうね、今井君?」
「こいつも知らないらしい。今日聞いてみてくれないか?」
「なるほどねえ……」
山田はニヤニヤとした顔でこちらを見る。完全に誰が相手かわかっているかのような顔だ。まあ一度遊園地で会っている以上、推測は容易だな。
「まあ、考えておくよ。タイミングが合えば聞いてみるさ」
「流石だ! 期待しておくよ」
「その情報を得て何が楽しいんだ?」
「ゴシップは楽しいだろ? 誰と誰が付き合っている、誰が誰を好きだ。そういう話は楽しいと思うんだが」
「あ、おはよー!」
そんな話をしていると、野口が現れた。山田と同じ駅だったのだろうか、偶然同じ車両に居合わせたようだ。
「おはよう。今電車乗ったのか?」
「そう! 私の最寄駅だよ」
「山田と一緒だな、山田も今乗ってきたんだ」
「家近いのかな? どのあたりに住んでいるの?」
「私は……」
野口と山田によるローカルトークが始まる。2人で盛り上がっているが、俺と阿部にはさっぱりわからない。
「なあ、後は伊藤さんと前田さんだよな?」
「そのはずだが」
「お前は伊藤さんと話すだろ? このまま行くと俺は前田さんとになるのか? 緊張するんだが」
「伊藤とはいつも話しているしなあ。どっちでもいいぞ」
「まじか、なら伊藤さんと話して過ごそうかな。前田さんと話が続く自信がないわ。お前なら前田さんでもきっと大丈夫だろう、なんとなくだが」
まあ確かに伊藤か前田なら伊藤の方が話しやすいのは間違いない。前田のオーラにはいまだに慣れないからな。学校1のアイドルは伊達ではない。中途半端な陽キャラが近づくと輝きで消滅する可能性すらある。
BBQ場は電車で1時間、森の中の駅で降りて15分の場所にあるらしい。とりあえず駅に到着したが、伊藤と前田はまだ来ていない。
「ついたよー、ってLINEしたら、2人とももうすぐ着くってさ。今同じ電車らしいよ」
「そうか、あの2人どんな話しているんだろうね。全く想像つかないよ」
「確かにね。まあでも葵はなんだかんだで誰とでも仲良く話せるタイプだから大丈夫じゃない?」
次の電車が到着し、伊藤と前田が出てくる。2人は、笑顔で会話しているようだ。こっちに気づいて手を振っている。これで6人が全員集合した。
「BBQセットは全部レンタルなんだよね?」
「うん、予約してあるよ! 後は食材を買っていくだけだね」
「調べたら近くにスーパーがあるらしいからそこに寄って行けばいいと思うわ」
女子3人が手筈を整え、テキパキと段取りを決めていく。男3人は黙ってそれについていくだけだ。
スーパーにつくと、3組に分かれる。野菜組と肉組と飲み物を買う組だ。グループ分けの結果、俺は伊藤と飲み物を買いに行くことになった。
「飲み物は適当でいいよな。お茶とスポーツドリンクと、炭酸ジュースと。大きいのを買っておけば十分だろう」
「せっかくだし、色々見てみましょうよ。普段飲まないジュースを飲む方が楽しいわよ」
「そんなものか…… まあ探してみるか」
「伊藤は、BBQは結構やったことあるのか?」
「ないわ。小さい時に家族で何回か経験はあるけど……。戦力になるかは怪しいわね。野菜切るくらいならできるかも。やったことある?」
「俺もないな。他の奴らに頼ることになりそうだ。野菜を切ったこともないよ」
「まあ、前田さんが結構経験あるらしいよ。任せてって言ってた。炭なんかも使えるらしいし、安心ね」
そんなこんなでBBQの準備は進んでいく。
学園のアイドルはお悩みのようです だいのすけ @daicekk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます