幕間(第22.5話)
「清明君、尻に敷いたらしいよ。」
のトコです。早紀ちゃん無双。
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「……また来たのか。
こっち見んなって言ったろうが。」
「……。」
「なんだよ。髪なんか切りやがって。
前のほうがマシだったじゃねぇか。
俺は短髪の女は嫌いなんだ。」
「……。」
「マジで、葉菜とは偉い違いだな。
ったく、勿体ねぇことしたなぁ。」
「……。」
「……チッ。
なんだよ。なんで黙ってんだよ。」
「もう、おわりかな、って。」
「……なん、だと。」
「君、口喧嘩、苦手でしょ。」
って、留美ちゃんが言ってたから。
(あのさー、あの子、喧嘩なんかしたことないんだよー。
あのおかーさまが、ガッチリ囲ってるからさー。
男友達なんて、いないよ?)
……ふふ。ほんとだ。
顔、赤くなっちゃってる。
「……てめぇっ。」
「私が君を嫌いになるようにして、
私から解消させようとしてるんでしょ?」
「……。」
あ、黙った。
留美ちゃん、凄いな。
「君の家、大変そうだもんね。
ひょっとして、君の優しさかな?」
「図にのるんじゃねぇぞ。
この下郎が。」
「ふぅん。
下郎、って意味、わかってる?」
「……は?」
「下郎は人に仕える人、だよ。
だから、親の言いなりになってる、
私も、君も、下郎だよ。」
「……っ。」
「そうだね。
葉菜ちゃん、こんなこと言わないもん。
優しく癒し声で聞いてあげてたんだもんね。」
「……あぁ。
そうだな。本当に。
お前とは」
「でも君、
葉菜ちゃんに棄てられたじゃない。」
「っ!」
「あはは。
好きだったんだったら、大事に大事にすればよかったのに。
ほんとに勿体ない。」
「……。」
「逃がしてあげたつもりなの?
葉菜ちゃん、そんなことしなくても、
逃げようと思えば、いつでも逃げられたんだよ。」
「!?」
……なんだよ、ね。
(葉菜もさー、
時間を掛けるつもりだったんだよー。)
時間を掛けて、力を蓄えていくつもりだったんだろう。
急ごうとしなかった、一つの理由は。
「君を、傷つけないためだよ。
東郷清明君。」
「……。」
「でもね?
葉菜ちゃん、そうも言ってられなくなっちゃったんだ。」
「……?」
「葉菜ちゃんが好きな人に、
強力な恋敵ができちゃったから。」
「……葉菜が、好きな奴、だと?」
「あれ、知らない?」
「……誰、だ。
誰だ、そんなやつっ。」
あぁ。
そこまで、なにも知らされてないんだ。
親からも、周りからも。
「あはは、言ってあげない。
君に言ったら、葉菜ちゃんにも、
葉菜ちゃんが好きな彼にも、恨まれちゃいそうだから。」
「……教えろ。」
うわー。目、澱んじゃってる。
ごめんね、真人君、
粘着な子に、名前、知られそうだよ。
「知って、どうするの?」
「……。」
「怒鳴り込みにでもいく?
俺のオンナに手を出すなー、って。」
「……そんなこと、しねぇってんだよ。」
あぁ。
ほんとだ。
悪い子じゃ、ないんだ。
「じゃ、なにしに行くの?」
「……教えねぇ。」
「あ、そう。
じゃ、私も君に教えない。」
「っ!?
……って、最初から教えるつもりなんかねぇだろ。」
「あはは。」
「なんだよ。」
「結構よく、聞いてくれてるんだなって、私の話。
うちの家族より、ずっと。」
「……っ。
なんか、調子、狂う……。」
……なんか。
ちょっとだけ、楽しい。
「ねぇ。」
「んだよ。」
「葉菜ちゃん、君と別れた今、
何をしたいんだと思う?」
「……知るかよ。」
「そっか。
じゃ、君は、私を避けて、何をしたいの?」
「……。」
やっぱり。
私と、同じ。
なにも、ないんだ。
葉菜ちゃんのことを好きだったのに、
葉菜ちゃんを大事にできなかった。
自分が、嫌いだから。
私と、同じで。
「ね。
契約、しない?」
「……は。」
「私に、協力して。
私が好きになれて、親に納得して貰えるような人が見つかったら、
君との婚約を、私から、解消してあげる。」
「……なんだよ、それ。」
「君、私のこと、嫌いなんでしょ?」
「そうは言ってねぇよ。」
「じゃ、なんで嫌われるようなこと、言ったの?」
「……。」
んもう。
これじゃまるで、小学生みたいじゃない。
なんで、こんな風になっちゃったんだろう。
やっぱり、母親かな。
「嫌われるようなこと言ったら、駄目だよ。
自分のこと、もっともっと嫌いになるから。」
「……お前は。」
「ん?」
「お前は、自分のこと、嫌いなのか。」
「うん、大嫌い。
だから、自殺した。」
「!」
「失敗して、生き残っちゃったの。
だから、こうやって、君の前にいる。」
「……そんなに、俺のことが。」
「うーん。まったくないわけでもないよ?
でも、これは私の問題。
私が、大切にしたかった人を、傷つけちゃったから。」
「……。」
「でも、
生きてていい、私には価値があるんだって、
言ってくれる人がいたから。
なんか、死ぬ気が失せちゃった。」
「……
お前、そいつのこと。」
「うん。
愛してる。海よりも深く。」
「……なんだよ、それ。」
「でも、その人は、私には届かない。
私に振り向いてくれることは、絶対にない。」
……言ってて、哀しくなりはするけど。
それでも、絶望はしない。
光を、貰ったから。
「君も、恋をしなよ。」
「……は。」
「は、じゃなくて。
君、そんな悪い顔じゃないし、
人の話はちゃんと耳に入れてるし、
歪んではいるけど、人に気遣いもできるわけだから、
曲がった心をちょっと直すだけでいいんだよ。」
「……無理だ。」
「親?」
「!」
「親、選べないからね。
君も、私も。」
「……。」
「だから、君が、
親なんてげしっ! ってできるような、
素敵な人が見つかったら、君から、婚約を解消してよ。」
「……なんで解消前提なんだよ。」
「だって君、私のこと、嫌いでしょ。
嫌いじゃなきゃ、あんな酷いこと、言わないと思うな。」
「……。」
「だから、あんなこと言っちゃ、駄目だよ。
女の子はね、ずっと、ずっと覚えてる。」
「……そうかよ。」
「うん。
死ぬまで覚えてるよ。」
「……っ。」
「分かった? だから、もう言わないで。
思いついたことを考え無しに言うなんて、子どものやること。
それか、私達の嫌いな親戚達とか、かな。
ああはなりたくないでしょ?」
「……。」
「私が、君を、いい男にしてあげる。
葉菜ちゃんが、ちょっとだけ惜しかったかも、って思うくらいに。」
「ちょっと、なのかよ。」
「うん。
いまなんて、零点一ミリも思ってないよ?」
「……。」
「あはは。落ち込まないの。
いっぺん死んでみる?」
「……お前。」
「あははは。
ね。
一緒に、親達と戦おうよ。
君となら、できそうな気がするから。」
夢で見た、疎遠になったクラスメートを助けたら、修羅場がはじまった @Arabeske
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