第5話  君とともに

『中学3年生 首吊り自殺か』

決して大きくはない見出しだった。

僕は頭が真っ白になりながら、母に聞いた。

すると、母は取り繕うとしたが真実を話す決心をした。


「結論から言うとね、晴常(はつね)さんは8年前に自殺をして亡くなったわ。

私もわからないわ。

どうして自殺をしたのか、なんて。

でも、晴常さんが亡くなったから、2週間後ぐらいに、彼女の両親が家を訪ねてきてね。

彼女が遺書を残していたそうで。

そこには彼女が亡くなった後に心臓を幼馴染にであるあなたに移植してほしいって書いてあったそうよ。

ドナーが見つからなければ、あなたが死ぬってことをどこからか聞いていたのかもね。

晴常さんの両親は彼女の意思を尊重して臓器提供してくださった。

もちろん、晴常さんの心臓があなたに適合せずに晴常の死を蔑ろにする可能性だってあったわ。

奇跡か彼女の想いかはわからないけれど手術は成功して今もあなたは元気に生きてる。」



話を聞いている間ずっと心臓がドクンと心拍する音が確かに聞こていた。

まるで彼女が『私はここにいる』と言ってるように。

君はいつでも僕の一番近くにいてくれたんだな、とぐしゃぐしゃになった顔で思った。


それから、数日後、僕は晴常の両親が移り住んだと母から教えてもらった隣県に来ていた。理由はもちろん、晴常へのお参りと感謝を伝えるためだ。

伝えられた家の前に立ち、インターフォンを押した。

少し間があった後に応答があった。

『…どちら様でしょうか?』

穏やかな声だった。

僕は名前を名乗り、8年前のと言いかけたところで、

『少し待っててください』

と言ってインターフォンが切れた。

その数秒後、晴常にそっくりの女性が出てきた。

お母さんは僕を迎え入れてくれた。

家に入ってから、僕は頭を下げた。

「突然押しかけてしまってすみません。彼女…晴常へのお線香だけでもあげさせてまらえないかと。」

お母さんは暖かく、

「大丈夫よ、きっとあの子も喜ぶわ。」

それから、リビングに案内され、置かれた座布団に正座をし、彼女の写真の前で手を合わせ、彼女へ感謝を伝えた。

一通り、お参りが済み、お母さんの方を向いた。

お母さんの頬には大粒の涙が流れていた。

その後、2時間ほど8年前のことを聞いて、

そろそろと言って、帰る支度をし、玄関を出ようとしたとき、

お母さんが

「あの、これもしよかったら」

と言って、一つの箱を出した。

「あの子が大事にしてたものなの」

僕はお母さんに感謝を伝え、受け取った。


家に帰り、お母さんからもらった箱を開けると、そこには彼女との思い出の物がたくさん入っていた。

誕プレであげたもの、写真などたくさん。

思い出に浸っていると奥の方に手紙が入っていた。

僕宛てだった。

僕は恐れながら開いた。


塚本 想くんへ


初めに、先に死ぬことを許してね。

あんたが死ぬ運命を受けいれたくなかったの。

あんたが少しでも助かるなら私が死んで、心臓をあげたかった。

鈍感なあんたなら何でそこまでするのかわからないかもしれないから最後にちゃんと言っとくね。

私はちっちゃなころからずーーっと想のことが大好きだったの。

だからね、私は私の選択に後悔何てなんもない。

私ね、想、とっても幸せな人生だったよ。

好きな人と誰よりも近くで過ごせた。

でもね、我儘を言うとねもっと想とともに生きたかった。

だから、想はとことん幸せになって、私にいっぱいいっぱい土産を持ってきてね。

想、大好きだよ、誰よりも愛してる      

                           日陽 晴常


読み終わった後で内から流れ出す感情が爆発した。

自分の感情を制御できなかった。

色んな思い出が入り混じったこの感情を止めることなどできなかった。


数ヶ月後、晴常のお墓参りをした。

お墓には日陽家之墓としか刻まれていないがそれでいいと思った。

「晴常、僕も君の心臓とともに生きるね。ちゃんと見守っていてね。」

その時、確かに、晴常の懐かしい笑い声が聞こえた気がした。






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君とともに生きたい よもぎもち新太 @sakuraayane

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