6.■■■■に射貫かれて■ぬ
「……インダストリアルがいいな」
「ん? 何の話?」
「ピアス。開けたいなーって」
インダストリアルについて話したのはこれっきりだった。十五になりたての僕は、帰宅後すぐに親のPCでその言葉を調べた。彼女の薄い耳に、矢形のギラギラしたモチーフはきっと映えるのだろう。そう思ったのを鮮やかに覚えている。
……実際。
「そのピアス、何か凄いね」
「言うと思った」
「何か、凄く■■っぽいよ」
「褒められてる?」
「褒めてる褒めてる」
矢に穿たれた薄くて白い彼女の耳は、凄く綺麗だった。
◆ ◆ ◆
「なんですか? それ」
「これ? 呪いの指輪。友達とお揃いで買ったんだよね」
「呪いの指輪なのにわざわざ買ったんですか? 友達とお揃いで?」
「買ってから呪われちゃったからね~。呪いに当てられないように、逆さまに付けてるんだ」
「何ですかそれ。そんな安物の指輪に上下なんてあります?」
「はい」
「えっちょっと、やめてくださいよ! 呪われたく無いんですけど!?」
「僕限定の呪いだから大丈夫。見てみ」
「えぇ……弓矢のイラストと、ふぉー、りん、らぶ?」
「そーそー。弓は抜ける気配も無いからさ、せめて落ちないようにって逆さまにしてんの」
「うわあ……ロマンチシズムの煮凝りみたいなことするぅ……女子高生かよ」
「うっせ」
「……指輪の呪い、解けないんですか?」
「多分一生ムリ」
「呪われた先輩を貰ってあげられるのは、私しかいないって訳ですね」
「うーん。救われてるのは確かだけど、差し上げるには些か欠陥品でね」
「それでも良いんですけど?」
「僕が嫌なんだよ、大事な後輩に粗悪品を掴ませるのは。これからもオトモダチでいて欲しいな」
「残念なことだ……」
――死因:老衰
(はつこいに射貫かれて死ぬ)
『 最 期 』 揺井かごめ @ushirono_syomen
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