小説に限らず、あらゆるものは「冒頭が大事」とよく言われる。
この作品の冒頭は以下である。
家が貧乏で母子家庭で性格がネクラで馬鹿で運動音痴な僕が、幸せになる道なんてこの町には用意されていなかった。
この一文がもたらす絶望感は相当なものだ。
地べたを見ることしか許されなかった子供の独白が続けられる。
どこまでも非力な彼。頼る先もなく、ただ地べたに満ちる死骸を見つめるばかり。
彼は生きるために自分自身に贈り物を捧げる。
それは一匹の猫。地べたに倒れた自分と「交流」した唯一の友だったのだ――
現実と非現実が入り混じり、独特な読み味になっています。
彼の生きる道が何処へつながるのか、ぜひご確認を。