TKG(卵かけご飯)

文重

TKG(卵かけご飯)

 人生最後の晩餐は卵かけご飯と決めている。米の品種、炊き立て飯であること、卵の銘柄や鮮度はもちろんだが、黄身の色にもこだわらざるを得ない。鶏の餌の配合が色の濃さを左右することは承知の上だが、濃ければ濃いほど良い卵のように感じるのだから、視覚から入る情報とは不思議なものだ。卵かけご飯専用醤油なるものもあるが、私は九州の甘い醤油で食すのを最も好む。


 TKGとはよく言ったものだ。もっとも私にとってのTKGは、卵・米・醤油の三位一体(Trinity)、ご飯物の王様(King)、神(God)の創りたもうた究極の起源=卵という意味なのであるが。


「先生、そろそろ本番始まります」

「ああ、はいはい」

 生返事をしながら、世界各地から取り寄せられた豪華な食材が並ぶスタジオのセットにちらと目をやる。気づかれないほど小さな溜息をついて、しぶしぶ至高のTKGを頭から追い出すと、眩い照明の中に足を踏み入れた。


「本日のゲストはご存じ、世界的料理研究家の……」

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TKG(卵かけご飯) 文重 @fumie0107

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