第43話

「じゃあな、みなやる気に満ちておるからの。上級者編としようかの」


「上級者?」とおれたち。

「そうじゃ。中学で習う漢字もいっしょに覚えるんじゃ」

「いままでも覚えたから、楽勝だよ!」

 とおれが言い、みんなも強くうなずいた!

 大夫たいふは、ふぉっふぉっと笑った。


「四年生で習った『菜』はの、くさかんむりに『采』じゃろ」

「うん」とおれたち。

「『采』はの、木の実を手でつみとる形なんじゃよ」

「あ、だから、『野菜』の『菜』なのね!」とレイアちゃん。


「うむうむ、そうじゃよ。それでの、『採』はの、てへんじゃろ?」

「あ、分かった! 『採』は、手でとるから、とるっていう意味なのね!」とユウコちゃん。

「そうじゃよ! みんな、すごいのう!」

 大夫はくるんって一回転して、笑った。


「中学生の漢字って、どんなの?」

 ジュンがわくわくしたように言った。おれも知りたい! わくわくしてる。きっと、レイアちゃんもユウコちゃんもわくわくしている。


「『彩』じゃよ」


 大夫が書いた文字がぴかんって光った。

「『采』の横のな、三本ひげみたなものはな、色の美しさを表すんじゃよ。だからいろどる、という意味になるんじゃ」


「へえ、おもしろい!」

 ってみんな、目をきらきらさせた。


「菜」「採」「彩」と書いて、言う。

「『菜』はくさかんむりに木の実を手でつみとる形。だから、『野菜』の『菜』。『採』は手でとる。だから、とる。『彩』は、色の美しさを表す三本ひげがついている。だから、いろどる」


 筆がぴかーんぴかーんと光って、またぴかーんぴかーんと光った。

 大夫はぽわっと光って、くるくるって踊っていた。



「みな、すごいのう」

「大夫ちゃんのおかげ!」とレイアちゃんとユウコちゃんが言う。

 二人は、大夫を手に乗せてなでなでしていた。



「じゃあ、おさらいしよう!」

 とジュンが言って、おれたちは書いた漢字を見ながら成り立ちを言った。




「『因』は、ふとんに大の字で寝る。だから、よる、もとづく、たよる」

「『困』は、門に木をはめて、出入り禁止にしたようす。だから、こまる」

「『険』は神様が下りてくる場所。だからけわしい」


「『境』は、土地の終わり。だから、さかい」

「『混』は、昆虫が群れて水みたいにまざりやすい。だから、まじる」

「『招』は神様を手でまねく。だから、まねくという意味。『紹』は、糸でつなぐから、ものごとや縁をつなぐという意味」


「『許』は、きねを置いて祈りの言葉を神様にささげて、ゆるされる。だから、ゆるす」

「『職』は、昔、手柄の耳の数を数える仕事だったから、職業の職」

「『精』は、お米の美しさを表す。だから、白くする、まじりものをとりさるという意味。こころ、細かいという意味もある。『清』は、みずが美しい。だからにごりがない」


「『測』は水を表すさんずいときまりという意味の『則』。だから、水の深さをはかる。その後いろいろな物をはかるという意味もなった」

「『複』はころもへんに、くり返す、もとに帰るという意味のつくりで、衣を重ねることを指す。だから、いろいろなものが二重であること。そして、『復』は、くり返すもとに帰るという意味」

「『任』は、にんべんと強い力や重さにたえられる台。だから、人がたいへんな仕事にたえられること」


「『墓』は草に、日が沈んだ土の中を表す。だから、はか」

「『菜』はくさかんむりに木の実を手でつみとる形。だから、『野菜』の『菜』。『採』は手でとる。だから、とる。『彩』は、色の美しさを表す三本ひげがついている。だから、いろどる」




 勉強って、おもしろいんだなって思った。

 特に漢字の勉強って、苦手でやりたくなかったけれど、大夫といっしょに勉強すると、すごくおもしろい。

 ジュンやレイアちゃんやユウコちゃんもそう思っていると思う。

 漢字の勉強、おもしろい‼

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