(4)増えていくうれしい想い出と、名前に込められた思い

第44話

「わしから、おぬしらに宿題を出してみたいのじゃ」

 ひと段落したところで、大夫たいふが言った。


「宿題?」とみんな、声をそろえて言う。

「そうじゃ」

 大夫は深くうなずいた。そして、言った。


「いままで、いろいろな漢字をいっしょに勉強して、漢字のことがいろいろ分かったと思うのじゃ」

「うん」

 みんな、うなずく。


「だからの、自分のな、名前の漢字の意味を調べて欲しいのじゃ」

「自分の名前の漢字?」

 そう言って、おれたちはお互い、顔を見合わせた。


「そうじゃ。漢字の成り立ちや漢字の意味を調べて、自分の名前の意味に込められた、お父さんやお母さんの願いや祈りを知って欲しいのじゃよ」

 大夫は筆をくるくるって、じょうずに回しながら言った。


「あ、でも、お父さんやお母さんに聞いたことあるよ、名前の由来」とおれは言った。

「ボクたち、そういう宿題が出たことがあるんだよ、大夫」とジュンが言い、レイアちゃんもユウコちゃんもうなずいた。

 大夫はふふふ、と満足げに笑って、言った。


「そうじゃろうよ、そうじゃろうよ。宿題でなくても、聞いたことがあると思うぞよ。みんな。愛されているからのう。みんなの家に行って、わしはよくわかったのじゃよ。だいじにだいじに育てられていることがの。うれしいことのだのう。あのな、だからこそ、自分たちの手で、もう一度調べて、そうして考えて欲しいのじゃよ。名前の意味をな」


「わかったよ、大夫!」とおれとジュン。

「きっと、自分で調べるってことがだいじなのね、大夫ちゃん」とレイアちゃん。

「がんばる!」とユウコちゃん。

 みんな、いい笑顔だった。



 さて。

 自分の名前の漢字の意味を調べる前に、おれたちにはやることがあった。まず、漢字の五十問テスト!

 今度はみんな百点だった‼


「おれ、漢字の五十問テストで百点とったの、初めて!」

 おれは信じられなくて、何度もテストを見た。

 ほんとうに、百点だ!


「だってがんばったもん、タチバナ」

「うん!」

「ひゃくてん!」とユウコちゃん。

「あたしも、百点、なかなかとれなかったから、うれしい……‼」

 みんなで百点の答案を見せ合った。

「みんな、百点で、うれしい!」

 レイアちゃんが言った。

 うん。

 みんな百点でうれしい!

たちばなくん、最近、がんばっているわね」

 って、先生にもほめられた。


 そうだね。

 大夫に会う前は、漢字のテスト、小テストも五十問テストもひどい点数だった。

 漢字はたくさん書かなくても覚えられるんだ。

 書くだけが勉強じゃないんだよね。

 ダジャレも呪文も、よく覚えているよ。

 それから、漢字の意味を考えて美しく書く方法も。

 漢字の成り立ちはすごく面白かった。

 おれ、もっともっと、知りたいな。


 漢字の勉強、楽しい!

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