第42話

「『測』はさんずいと、きまりという意味の『則』。したがって、もともとは水の深さをはかるという意味だったんじゃ。その後、水だけでなく、いろいろな物をはかることににも使われるようになったんじゃよ」


「『規則』の『則』よね!」とユウコちゃん。

「うん、『規則』も五年生の漢字だね」とレイアちゃん。


「『測』は水を表すさんずいときまりという意味の『則』。だから、水の深さをはかる。その後いろいろな物をはかるという意味もなった」

 とみんなが言い、「測」と書く。

 筆がぴかーんと光る。


「おれ、『規則』も書こう!」

 とおれが言うと、みんなも「ボクも!」「あたしも!」「わたしも!」と言い、「規則」と書いた。

 そうしたら、筆がまたぴかーんと光って、笑いあった。

 大夫たいふは、ほ、ほ、ほ、と笑った。



「みな、ほんとうにがんばり屋さんじゃの。文字の神様として、これほどうれしいことはないのう」

「えへへ」

 おれたちもうれしい!


「さての、次は『複』じゃよ。『複』はころもへんに、くり返す、もとに帰るという意味のつくりを合わせた漢字じゃの。だから、衣を重ねること、裏地のついた着物などを指したんじゃ。そこから、いろいろなものが二重であることを表すようになったんじゃよ」


「あ、だから『復』はくり返すという意味があるのね」とユウコちゃん。

「『往復』っていう場合は、もとに帰るっていう意味だね」とジュン。

「じゃあ、いっしょに覚えるといいわね!」とレイアちゃん。


「『複』はころもへんに、くり返す、もとに帰るという意味のつくりで、衣を重ねることを指す。だから、いろいろなものが二重であること」とおれ。

「『復』は、くり返す、もとに帰るという意味!」とユウコちゃん。

 みんな、「複」と「復」をていねいにゆっくりと書く。

 大夫の筆が、ぴかーんぴかーんと光って、おれたちは笑いあった。



「『任命』という言葉があるであろ? あの『任』は、にんべんと『壬』でできておる。『壬』はの、物をつくるときに使う台の形なんじゃよ」

「台?」とおれ。

「うん、その台の上で金属をたたいたんじゃよ。強い力や重さにたえられる台じゃ」

「じゃあ、にんべんと強い力や重さにたえられる台、だから……」とジュン。


「人がたいへんな仕事にたえられること!」とおれ。

「そうじゃ」

 大夫はにっこり笑った。


 みんなで、「任」と書いて、言う。

「『任』は、イと強い力や重さにたえられる台。だから、人がたいへんな仕事にたえられること!」

 筆がぴかぴかーんと光った。



「さて『墓』に行こうかの。『墓』の字をよく見てみるがよいぞ」

 大夫はいつもよりも大きく、「墓」の字を書いた。


「上にくさかんむりがあるわね」とレイアちゃん。

「中には『日』がある。太陽のことかな?」とジュン。

「下には『土』もあるよ」とユウコちゃん。

「草に、日が沈んだ土の中だから、おはか?」とおれ。

「その通りじゃ!」

「墓」と書く。


「『墓』は草に、日が沈んだ土の中を表す。だから、はか」

 筆がぴかーん、ぴかーんと光る。

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