第41話

「『招』はてへんに『召』。『召』は祈りにこたえて、神様がおりてくることを表す形じゃ。神様を手でまねくことから出来た漢字なんじゃよ」


「あのね、大夫たいふ。『招』って、『紹介』の『紹』と似ているよね」

 ジュンがそう言うと、大夫たいふはうれしそうに言った。


じゅん殿は物知りじゃのう。『紹』は中学校で習う漢字じゃよ。『紹』はいとへんじゃろ? だからの、糸の端と端とをまわしてきてつなぐ、という意味になるんじゃ。絶えないようにものごとをつないだり、縁をつないだりする意味になるんじゃよ」


「糸だから、ものごとや縁をつなぐんだね」とジュン。

「じゃあ、いっしょに覚えちゃおうよ」とおれは言った。


「『招』は神様を手でまねく。だから、まねくという意味。『紹』は、糸でつなぐから、ものごとや縁をつなぐという意味」

 筆がぴかーんと光る。


 すごいや!

 中学校で習う漢字も覚えた!



「みな、熱心じゃのう。うれしいのう」

 大夫はくるくる回りながら、言った。

「大夫ちゃんの教え方がおもしろいから!」

 とレイアちゃんが言い、大夫はうれしそうに笑って、「じゃあ、次の漢字じゃの」と言った。


「『許』は、ごんべんと午から成る。ところでの、おもちつきのときの、きねとうすの、きねはの、『杵』と書くのじゃ。午はの、きねの形を表わしているんじゃよ。うまと読むのは、十二支に『午』を使い、うまと読ませたからじゃ。もともとはきねの形なんじゃよ。きねである『午』を置いて祈りの言葉を神様にささげ、ゆるされた、という意味なんじゃ」


「へえ。『午』がきねとの形とは知らなかったよ。うまというのは知っていたけれど」

「午」はうまだよって教えてくれた、ジュンが目を輝かせた。

「不思議じゃのう。最初は馬の意味はなかったのじゃよ」

「おもしろいね!」とジュン。


 そして、みんなで言う。

「『許』は、きねを置いて祈りの言葉を神様にささげて、ゆるされる。だからゆるす」

 もちろん、筆はぴかーんと光る。



「『の職業』、覚えているじゃろ? その『職』の成り立ちはの、戦が関係しているんじゃよ。古代の中国ではの、敵を討ちとったしるしに耳を切り取ったんじゃ」


「きゃー!」とレイアちゃんとユウコちゃん。

「昔はなかなか残酷なことがあったんじゃよ。それでの、その取った耳の数を記録する仕事を『職』と言ったんじゃ」

「へえ。だから、みみへんなんだね」とおれとジュン。


 みんなで言う。

「『職』は、昔、手柄の耳の数を数える仕事だったから、職業の職」

 筆が光り、おれたちは成り立ちを覚えたことがわかった。



「『精』は、『米』と『青』。玄米を白米にすることを、精米っていうじゃろう? 『精』はお米の美しさを表すんじゃ。だから、白くする、まじりものをとりさるという意味になるんじゃよ。こころとか細かいという意味もあるの」


「精米すると、茶色い玄米が白いお米になるものね。おばあちゃんちで見たことあるよ」とユウコちゃん。

「精神っていうことばがあるから、こころって分かる! もしかして、きれいなこころっていう意味だったのかな?」とレイアちゃん。

「精巧につくられた美術品っていうよね。これって、細かいって意味だよね」とジュン。


「あ、じゃあね、四年生のときに習った『清』の字は、だから、みずが美しいになって、にごりがないっていう意味になるの?」

 そうおれが言うと、みんな目を輝かせておれを見た。


 そして大夫が

「あやや! 和樹かずきがそういう発想ができるようになって、ほんとうにうれしいのう、うれしいのう」

 大夫はちょっと涙ぐんで、くるくる、くるくるって踊った。

 そうして、身体がぴかぴか光って、なんだか、見ているおれたちもうれしい気持ちでいっぱいになった。


「じゃ、言おう!」とおれが言い、みんなで言う。

「『精』は、お米の美しさを表す。だから、白くする、まじりものをとりさるという意味。こころ、細かいという意味もある。『清』は、みずが美しい。だからにごりがない」

 そうして、ていねいに「精」と「清」を書く。

 大夫の筆が、ぴかぴかぴかーん、ぴかーんと、大きく光った!

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