(3)漢字を成り立ちで攻略せよ‼

第40話

「それじゃ、始めるかの」

 大夫たいふはそう言うと、筆をぴかっと光らせて、胸を張った。


 今日はおれんち。

 おれんちとレイアちゃんちがあるこのマンションが、ちょうど、ジュンのうちとユウコちゃんのうちの中間地点なんだ。

 お母さんも、ダンスの練習をしてたときにみんなに会っていて、「ジュンくんたちならいいわよ」って言ってくれて、子どもだけでもうちで遊んでいいことになっていた。

 遊ぶっていうか、今日は勉強だけどね!



「ダジャレでの、『きな原因。が困る』というのをやったんじゃ。和樹かずき、覚えているかの?」


「覚えてる!」

「『因』と『困』は似た漢字だからいっしょに覚えた方がいいと思って、いっしょにダジャレにしたのじゃが、実は『困』は六年生で習う漢字なんじゃ」

「へえ! でも似てるよね」

 とおれが言うと、みんなは「うんうん」とうなずいた。


「『因』はの、ふとんに人が大の字になって寝ているようすを表した字なんじゃよ」

「ふとんに人が大の字で寝ている?」

「そうじゃ。毎日、ふとんで眠るのは必要なことじゃろ? だから、人のよるところという意となって、『よる』とか『もとづく』とか『たよる』という意味になったんじゃ」

「へえ」


「『因』は、ふとんに大の字で寝る。だから、よる、もとづく、たよる」


 みんなで、そう言いながら、「因」の字を書いた。

 大夫の筆がぴかーんと光った。


「ねえ、大夫ちゃん。じゃあ、『困』はどんな成り立ちなの?」とレイアちゃんが言った。

「『困』はの、まちや村の入り口の門に木をはめて、出入り禁止にしたようすから出来た字なんじゃ」

「あ、出ることも入ることも出来なくて、困ったんだ!」とジュン。


「『困』は、門に木をはめて、出入り禁止にしたようす。だから、こまる!」

 大夫の筆がぴかーん、ぴかーんと光った。

 ジュンが自分で理由を考えたから、筆が大きく光ったんだね。



「じゃあ、次は『険』じゃ。『険』のこざとへんは、神様が下りてくるはしごの形じゃ。そしてな、神様が下りてくるところはの、けわしいところなんじゃよ」

「こざとへんははしごなんだ」とジュン。


「まあ、横にしたおか、という説もあるがの。わしは、横にしたおかより神様が下りてくるはしごの方が、それらしく見えるんじゃ。おかは横にはならないからの」

「そうだよね、横になったおかって見たことないもん!」とユウコちゃん。

「神様が下りてくる場所は確かにけわしい場所のような気もするよ」とジュン。

「そうだね!」とおれとレイアちゃん。 


「『険』は神様が下りてくる場所。だからけわしい」

 おれたちはそう言い、文字を書く。そして、大夫の筆がぴかーんと光る。



「さあ、次々いくぞよ。『境』はの、土と『竟』から出来ておるじゃろ。『竟』は終わりという意味じゃ。『音』の下はかがんだ人の意味での。お祈りをしている人を表すんじゃよ。お祈りの途中で音がすれば願いはかなうと考えられていたんじゃ。音がして願いが叶うと、そこでお祈りは終わるんじゃよ。だから『竟』は終わるという意味になるの。終わりという意味の『竟』と『土』から、土地の終わりで、さかいを表すんじゃ」


「もしかして、音を神様が来たしるし、みたいに思ったのかな?」とレイアちゃんが言い、

「うんうん。音がしたら、願いがかなうって思ったんだもんね」とユウコちゃんが言った。

「昔は今みたいにうるさくなかったんだね。今は音だらけだよ」とおれが言って、みんなが笑った。そして、「境」を書いて、みんなで言う。


「『境』は、土地の終わり。だから、さかい」

 筆がぴかーんと光る。



「『混』は『昆』とさんずいであろ? さんずいは水でまざりやすい。『昆』は日の下に多くの人がいるという意味なんじゃ。昆虫も多くいて群れているじゃろ? 群れているとまざりやすいんじゃ」


「虫はよくかたまっているからね!」とおれが言うと、

「虫、あんまり好きじゃない」とジュンが言って、レイアちゃんもユウコちゃんもうなずいた。


「群れていると気持ち悪いよね……」とユウコちゃん。

「よく群れるから、水みたいにまざりやすいんだよ」とおれ。

「……うん、覚えやすい!」とジュンが言って、みんなで言う。


「『混』は、昆虫が群れて水みたいにまざりやすい。だから、まじる」

「混」と書いて、筆が光る。

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