第37話

「ねえねえ、ボクさ、お兄ちゃんに『じょうずにできたな』って言われて、嬉しかった!」

「マサトさんに?」

「そうそう」

 ジュンはとてもうれしそうに笑う。


 ジュンはお兄ちゃんが大好きなんだよね。

 マサトさんはやさしくて、なんでもできて。この間は水泳を教えてくれた。今でもときどきいっしょにプールに行く。きっと、ジュンにとってマサトさんはあこがれのお兄ちゃんなんだ。


 すると、レイアちゃんも言った。

「わたしも、お姉ちゃんにほめられたんだ! うれしかった!」

 レイアちゃんもすごくうれしそうだ。

「あたしは、弟や妹に自慢した! すごいでしょ? って! すごいすごいーって言ってた‼」

 ユウコちゃんはそう言って笑う。


「おれはきょうだいいないけど、お父さんやお母さんに『がんばったね』って言われて、うれしかった」

 きょうだいのいないおれはそう言う。


「タチバナ。ボクたちさ。運動会の前はいつも暗くなっていたし、運動会当日も、すごくゆううつな気持ちになっていたけど、今年はすごく楽しかったね!」

「うん、ジュン!」

 お父さんやお母さんも、そこを一番喜んでくれた。


「がんばればできるのよ!」とユウコちゃんが言う。

「がんばってよかったよね」とレイアちゃんが言う。



 ほんとうに、そうだ。


 いやだいやだと、後ろ向きな気持ちで努力もしないで、ただいやなことが過ぎていけばいいと思っていた。これまでは。


 でも、大夫たいふと漢字をがんばったら、点がとれた。

 ジュンといっしょに、マサトさんに教えてもらいながら水泳を練習したら、泳げるようになった。

 運動会のダンスは、ジュンとレイアちゃんとユウコちゃんと、みんなで練習をがんばった! 

 大夫には漢字を教えてもらった。そして、漢字は、意味を考えてきれいに書こうとすることで、覚えられることを知った。背中の一文字、今までなら、「識」の字は選ばなかった。書くのが難しいから。


 だけど、「識」を選んでよかった! かっこよかった!



「みんなでがんばって、ほんとうによかった」

 みんなで笑いあう。

 みんなといっしょだったから、がんばれた。

 大夫がおれの頭をぽんぽんとなでた。

「えへへ」

 ありがとう。



「ケーキ、食べる?」

 レイアちゃんのお母さんがケーキを持ってきた。

「みんな、すごくがんばったから。とってもよかったわよ」

 イチゴのショートケーキが乗ったお皿が、テーブルの上に置かれる。

「ありがとうございます!」



 みんな、満ち足りた気持ちでケーキを食べた。

 ケーキは甘くて、とてもおいしかった。

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