(4)運動会、ダンスじょうずに踊れたよ!

第34話

「もうすぐだね」

「どきどきする‼」

「間違えたらどうしよう……」

「そのときはそのとき!」

 ダンスの前、おれたちは黒いはっぴを着て四人で集まった。


 背中の一文字は、最初ノートで練習してから、筆で大きく書く練習もした。何度も練習をしたから、実際に、黒いはっぴの背中に白い絵の具で書いたときは、我ながらじょうずに書けたと思う。大夫たいふに言われたことや、自分で注意しなくちゃ、と思ったことを思い出して、ゆっくりていねいに書いたんだ。

 ジュンたちだけでなく、クラスのみんなにも「かっこいいね!」と言われてうれしかった。書いた字をほめられるなんて、初めてだった。


 大夫が「識の字のな、伸ばしてはねてかくところを、わざと大きく書いてみるがよいぞ」と言ったので、そうしてみた。

「ノートに書くのとは違って、背中にかっこよく文字を飾るのじゃから、わざとちょっとはみ出して書くのもよいぞ思うぞよ?」

 大夫に言われた通りに、伸ばしてはねて、のところを大きく、そして力づよく書いてみた。はねも、大げさに大きくした。

 そうしたら、とてもかっこよくなったんだ。



 堂々とした、力づよい「識」。

 おれは背中の文字を誇らしく思う。

 もっともっと、いろいろなことを知りたい。

 そして、ちょっと難しいことも、えいってやってみる勇気を持ちたい。



「行こう!」


 開始の合図が鳴って、ジュンが言った。

 みんなで走って向かう。

 ジュンが走って、レイアちゃんが走る。ユウコちゃんも走る。そしておれも走っていく。

 走るのも苦手だし、ダンスはほんとうに無理だって思ってた。出来ないって思ってた。


 でも、練習したら、ちゃんと出来た。

 漢字を書くことも苦手だった。覚えられないって思ってた。

 でも、「識」をとても上手に書くことが出来た。



 隊形に並ぶ。

 音楽が始まる前の緊張感。


 始まった!


 練習を思い出して、一生懸命踊る。

 だいじょうぶあんなに頑張ったんだから。

 隊形が変化する。

 走る。

 新しい隊形で、また踊る。



 ジュンやレイアちゃん、ユウコちゃんも真剣な顔で頑張っていた。

 それぞれの背中の「幹」、「夢」、「潔」の文字が、太陽の光を受けてきらきらと輝いているように見えた。三人の顔も、やっぱり輝いていた。


 おれも輝いているかな。

 大夫は少し離れたところで、ひとに見つからないように見ているって言っていた。

 大夫、見ていてくれるかな。

 今日はお父さんやお母さんも来ている。

 見やすい場所、とれたかな?


 ちゃんと見てほしいんだ!

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