(3)漢字を美しさで攻略せよ‼

第30話

「ねえ、おれ、せっかくだから、大夫が意味を教えてくれた漢字、ノートに書いておきたい」

 とおれが言うと、みんなも同意した。

「ボクも!」「わたしも!」「あたしも!」


 そこで、みんな、好きな筆記具で、漢字のノートにていねいに書くことにした。

 おれは、フリクションの青色、

 ジュンは、0.9のシャーペン。

 レイアちゃんは青い色のペン。

 ユウコちゃんは、0.5のシャーペン。


「あのね、濃さは2Bがいいの!」とユウコちゃんは言った。

「ボクはBかな。2Bだと、濃すぎて手が真っ黒になっちゃうんだ」とジュン。

「書きやすい濃さ、というのも大事じゃの」

 と、大夫たいふはにこにこしながら言った。




「『護』『衛』。まもる」

「『賀』。よろこびの気持ち。いわう」

「『技』。腕前、わざ。武道の一定の型」


「『基』。もと、起こり。土台」

「『永』。いつまでも続くようす」

「『幹』。木の太いところ、みき。だいじなところ、中心」


「『義』。正しいおこない。わけ、いみ。ほんもののかわりにするもの」

「『議』。意見を出して話し合う」

「『潔』。けがれなく、きよらか。あっさりしている、いさぎよい」


「『快』。気持ちがよい。病気が治る。はやい」

「『統』。ひとつづきにつながっているもの、すじ。一つにまとめる、おさめる」

「『導』。案内する、教える、みちびく。電気・熱を伝える」


「『賛』。ほめたたえる。たすける、同意する」

「『徳』。人としての立派な心や行い、めぐみ。利益になること」

「『武』。勇ましい、つよい。いくさ、そのための兵器や兵士」


「『夢』。眠っているときに見る、ゆめ。はかないもの、あこがれ」

「『識』。ものごとを見分ける、しる、その力。しるし」

「『織』布をおる。組み立てる、組み合わせる」




 おれはさっそく最初の「護」からつまずいた。

「大夫、うまく書けないよ」

 おれが書くと、漢字の右側が大きくなってしまう。だから、漢字はきらいなんだ。


「こりゃ!」

 大夫はおれのあたまを筆で軽く叩いた。

「すぐにあきらめるのは、おぬしのよくないくせじゃよ」

「だって」


「まずは、ごんべんをたてに長く書いてみるがよいぞ。横にくさかんむりを書く。言より少し横に長くな。たての棒は長く書かないのじゃよ。……そうそう。進のしんにょうのないのを、横に長く書く。これをたてに長く書くと失敗するんじゃよ。……そうそう。その下に、ごんべんに合わせて又を書く。……少しごんべんより長いくらいで」


「書けた!」

 ちょっとマス目をはみ出したけれど、今までよりもうまく書けた。

「上手に書こうとすると、漢字が覚えやすい気がする!」

 そう言うと、大夫の筆がぴかーん、ぴかーんと光った!


「その通りなんじゃ。漢字は美しく書くことで、覚えやすくなるんじゃよ。きれいに書こうとする気持ちがだいじなんじゃ」

「それはそうかもしれない」


 おれは、宿題を終わらせるためだけに、学校で急いで書いた漢字のことを思い出して言った。あのとき、漢字はひとつも覚えられなかった。


「バランスをとって書こうとすると、線はいくつあるかな、点はいくつあるかな、と、よく見て考えて書くであろ? じゃから、きれいに書こうと思って書く方が、頭に入るんじゃよ」

「うん!」

「漢字は美しく書くことで覚えられるのじゃ」

「わかった!」とみんなが言い、筆がまたぴかーんと光った。



「あたしもね、実は字があまりきれいじゃなくて。それに早く書こうとしちゃって、漢字のノート、汚かったの。でもこれからはきれいに書くようにする」

 とユウコちゃんが言った。

「うん、おれもがんばる!」とおれが言い、

「みんなできれいに書こうね」とレイアちゃんが言い、

「ボクもそうする!」とジュンが言った。

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