(2)背中の一字には気持ちを込めて

第27話

 おれんち、ジュンのうち、レイアちゃんのうち、ユウコちゃんのうち、と回って、今日はおれんちでダンスの練習をしていた。

 だいぶ上手になってきて、不安がなくなってきたところ。


「ところで、背中に書く文字、決めた?」

 と、ユウコちゃんが言った。

「決めてない」

 おれもジュンも、レイアちゃんもそう言った。

「ねえ、大夫たいふ、どんな字がいいかなあ?」

 とユウコちゃんが言うと大夫は

「それは自分で決めるのがよいぞよ」

 と言った。

「だよね」とユウコちゃん。


「お兄ちゃんは、『志を高く持とう』っていうことで、『志』にしたって言っていたよ」

「わたしのお姉ちゃんは『感謝の気持ちを込めて』という意味で『謝』にしたって言ってた」

「ジュンくんのお兄ちゃんもレイアちゃんのお姉ちゃんも、よく考えているね。いい漢字だね。あたし、何にしようかなあ。全然決まらないの」

 とユウコちゃんはつっぷした。


「ねえ、大夫。この間、大夫、漢字にはそれぞれ意味があるよ、今度意味を教えてあげるよって言ってたよね」

「そうじゃのう、和樹かずき

「それさ、いま、教えてくれない? みんな、背中の一字、悩んでいるんだ」

「いいぞよ~」

 大夫はくるくると踊って、光りながら言った。


「あ、じゃあさ、ボク、五年生の漢字中心に教えて欲しい! お兄ちゃんが五年生の漢字から選んだって言っていたから、なんとなくボクもそうしたくて」

「ジュンくんに賛成! わたしも五年生の漢字がいいな。お姉ちゃんもそんなこと言っていた気がする!」

 ジュンとレイアちゃんの意見から、五年生の漢字を中心に大夫に教えてもらうことになった。



「ではの。黒いはっぴの背中に書くと、かっこよさそうな字を説明しようかの」

「うん!」

 きらきらした目で、みんな、大夫が字を書くのを待った。


 大夫は筆を持って、空中に文字を書いた。筆がぴかんと光り、空中には「護」と「衛」という光る文字が現れた。

「どちらも、まもるという意味じゃよ」


「へえ。おれ、『衛』の字の意味、知らなかった!」

 筆がぴかーんと光り、大夫は嬉しそうに、ほ、ほ、ほ、と笑った。

 その後も、大夫が説明して、おれたちが「わかった!」と思うたびに、筆は光った。



「『賀』。よろこびの気持ち。いわう」


「あ、だから年賀状って言うのね!」とレイアちゃん。

「そうじゃ。次々行くぞよ」



「『技』。腕前、わざ。『わざの技術』を思い出すとよいの。武道の一定の型のことも指すんじゃ」


「『基』。もと、起こり。土台」


「『永』。いつまでも続くようす」

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