第23話

 夏休みは、プールに行ったりジュンと遊んだり宿題をしたり、やっぱり遊んだりして過ごした。プールに行くのを日課にしたせいで、はりのある夏休みになっていた。


「今日じゃろ? 夏祭りの日」

「うん!」

「わしも見てみたいのう」

「じゃあ、いっしょに行く? かばんからちょっと顔を出していればいいんじゃない?」

「いいのかの?」

「うん、いっしょに行こうよ!」


 おれはショルダーバックを斜めがけにして、ファスナーを少し開け、そこに大夫たいふと筆を入れた。

「どう?」

「いいぞよ」

 大夫はうれしそうに、ほ、ほ、ほ、と笑った。


 チャイムが鳴る。

 レイアちゃんだ。


 おれは、駅までの行き帰り、レイアちゃんといっしょに行くことになっていた。夕方五時からの数時間とは言え、レイアちゃんのお母さんは心配して、「和樹かずきくんがいっしょなら」ということになったのだ。


「レイアちゃん、来たわよ」

 お母さんが呼びに来たので「うん、分かった」と言って、玄関に行く。

 レイアちゃんは、レイアちゃんのお母さんといっしょにいて「和樹くん、よろしくね」とレイアちゃんのお母さんに言われた。

 レイアちゃんのお母さんは、おれたちが夏祭りに行っている間、おれのお母さんとおしゃべりするらしい。


「じゃ、行ってくるね!」

 レイアちゃんとおれはそう言って、駅前へ出かけた。ジュンやユウコちゃんとは駅前で待ち合わせをしている。


「楽しみだね!」

 レイアちゃんはふふと笑いながら、言った。

 白いワンピースがふわっと揺れて、なんとなくどきどきしてしまった。

「うん、楽しみ!」

「カズキくんは何食べたい?」

「たこ焼きかな?」


 おれは「カズキくん」と呼ばれて、なんだかどきどきしてしまった。

 レイアちゃんとあれこれ話しながら、駅までの十分足らずの距離を歩く。いつもよりずっと短く感じた。


「タチバナ! レイアちゃん!」

 駅に着くと、ジュンがこっちを見て手をふってきた。

 おれもレイアちゃんもジュンに手をふる。

 すると、おれたちとは違う方向から「おまたせー!」ってユウコちゃんが、ちょっと走ってやってきた。


「じゃあ、行こうか!」とジュンが言い、

「どこからまわる?」とレイアちゃんが言う。

「あたし、たこ焼き食べたい!」とユウコちゃん。

「あ、おれも!」

 とおれが言い、みんなでたこ焼き屋さんを探すことになった。


 地域の商店街主催の小さな夏祭りだけど、子どもはみんな楽しみにしているんだ。たこ焼きややきそばなんかの食べ物は、いつも食べているものなのに夏祭りで食べるとすっごくおいしく感じるんだよね。

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