(4)いろいろクリアしたあとは、夏祭り!

第22話

 プールはマサトさんのおかげで、なんとか二十五メートル泳げるようになって、なんとか授業も乗り切ることが出来た。


 レイアちゃんの泳ぎはやっぱりとてもきれいて、もっとうまくなりたいなあってしみじみ思った。小さいころの自分、なんでスイミング習うの、いやがったのかなあ。……でもいいか! いまがんばればいいよね。


 漢字の五十問テストは、ジュンとレイアちゃんは満点。おれは二問間違えちゃったから満点じゃないけど、でも、合格点だった!


「タチバナ、一回目で合格点って、すごくない? 初めてじゃん」

「ジュン! そうなんだよ。ジュンも満点ですごいよ」

「うん、うれしい!」

 レイアちゃんも「よかったね、タチバナくん」と言ってくれた。

「レイアちゃんも満点、よかったね!」

「うん!」


 するとそこに、レイアちゃんの親友のユウコちゃんが加わってきた。

「ねえねえ、レイアちゃん!」

 ユウコちゃんは鈴木すずき優子ゆうこという名前で、ふわっとしたレイアちゃんに対して、元気でにぎやかなイメージだ。


「なあに、ユウコちゃん」

「あのね、夏休み、夏祭り行かない?」

「夏祭り?」

「ほら、毎年駅前のロータリーでやるやつ。小さいけれど、出店もあるし、駅前なら子ども同士で行っていいよって、ママが言ってくれたの。五年生だからって」

「行きたい! あ、でも、お母さんに聞いてからね」

「うん!」

 と、ここでユウコちゃんは、おれとジュンに目をやり、

「タチバナたちもいっしょに行く?」

 と言った。

「行きたい!」

 と、オレとジュンは同時に言った。



「やけにうれしそうじゃの」

「そう? あ、漢字の五十問テスト、合格だったよ!」

「ほほう、よかったの」

「うん!」

「じゃが、うれしそうなのは、漢字のことだけじゃないのう?」

「え?」

 大夫たいふがにまにましながら言ったので、どぎまぎしてしまう。

「いてっ」

 そして、持っていた教科書を足の上に落としてしまった。


「ふぉふぉふぉっ」

「もう、大夫、その笑い方、やめて」

「水泳も、やけに熱心にやっておったのう」

「それは、泳げるように!」

「漢字も、熱心だったのう」

「それは、漢字テストがあるからで!」

「ふぉふぉふぉっ」

「もう、大夫~」

「何か楽しいことがあるのじゃろ?」

「なんで分かるの?」

「それは和樹かずきを見ていれば、一目瞭然じゃ」

 大夫は深くうなずいた。


「あのね、夏祭りに誘われたんだ。駅前の」

「ほほう、祭りとな! それはいいぞよ!」

「でね、ジュンとね」

「ふむふむ」

「それから、レイアちゃんとレイアちゃんの友だちのユウコちゃんといっしょに行くことになったんだ!」

「ほほう! よかったの!」

「うん、楽しみ!」


「今日もこれからプールかの?」

「うん、今日は一人で行く日」


 水泳は、学校でのテストはが終わってからも、練習を続けていた。ジュンとマサトさんと行くときもあるし、一人で行くときもある。マサトさんが言うには、たくさん泳ぐことが上達する近道だってことだから。マサトさんといっしょに行ったとき、フォームを見てもらったりする。レイアちゃんとも、ときどき会う。おれはすっかり水泳が好きになっていた。


「和樹、最近、ひきしまってきたぞよ」

「そう?」

「そうじゃ。よかったの」

「うん!」


 おれはカバンを手にすると、元気よく出かけた。

 おれ、レイアちゃんみたいに泳げるようになりたいんだ。

 そうなるまでには時間がかかるだろうけど、少しずつ出来るようになっていけたらいいなと思っているんだ。

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