第11話

「おはよう、タチバナくん」

「おはよう、レイアちゃん」


 翌朝学校に行くと、隣の席のレイアちゃんはもう来ていて、リュックをロッカーに片づけているところだった。

 レイアちゃんは、片瀬かたせ怜愛れいあと言って、ちっちゃくて細くて、肩までのふわふわの茶色っぽい髪をしていて、ほんとうにかわいいんだ。

 レイアちゃんとは同じマンションに住んでいて、だからすごく小さいときはいっしょに遊んだりした。おれのお母さんが産休を長くとっていたからね。レイアちゃんのお母さんは専業主婦だったと思う。おれのお母さんが職場復帰をして、おれは保育園に行き始め、その後、レイアちゃんは幼稚園に行き、だんだん遊ばなくなっていった。おれの両親が忙しかったせいもあるけれど。小学校に入学してからは同じクラスにはなかなかなれなくて、そうすると、挨拶くらいしかしなくなっていたんだ。


 だけど、五年生で初めていっしょのクラスになって。

 久しぶりに話すレイアちゃんはとってもかわいくなっていて、でも、「小さいころ、よくいっしょに遊んだよね?」なんて言ってくれて、おれはなんだかとてもうれしくなったんだ。


「タチバナくん、漢字の宿題、やった?」

 レイアちゃんは心配そうに言う。そう、ここんとこ漢字の宿題をやっていなくて、学校で慌ててやったり、先生に怒られたりすることが多かったから、心配してくれているんだ。レイアちゃんは優しい。

「今日はやってあるよ!」

 おれはドヤ顔でノートを見せた。


「すごいじゃない! ちゃんと書いてあるね」

「でしょ?」

「タチバナ、すごいじゃん!」

 レイアちゃんと話していたら、ジュンが加わってきた。

「でしょ?」

「がんばったじゃん!」

「えへ」


 ああ、でも、ほんとうは大夫たいふの魔法のおかげかなあって思ったら、ちょっと胸が痛んだ。


「気にすることはないぞえ」


「え?」

 た、た、大夫っ!

 気づいたら、大夫がちょこんとおれの机に立っていた。


「ついて来ちゃったの?」

「ほほ。和樹の学校生活を見てみたくてな」

 大夫はにこやかに言った。


 すると、レイアちゃんが「かわいー!」と言い、ジュンが「なんだ、この小さいおじさん!」と言った。


「えっ⁉」

 おれは驚いて、レイアちゃんとジュンの顔を見た。

「もしかして、見えているの?」

「……うん」

「見えてるけど?」


 大夫は、ほ、ほ、ほ、と陽気に笑っていた。

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