第7話

「次は、中の字で、漢字を見分けるダジャレじゃよ」

「中の字?」

「そうじゃ、行くぞよ!」

 大夫の筆がぴかんと光った。



の券。の巻」

きな原因。が困る」



 二つ続けて、大夫は言った。

「なるほど! 刀と己で見分けるんだね。『因』と『困』は大と木で!」

 おれは息を吸って、二つ続けて言った。


の券。の巻。きな原因。が困る」

 筆がぴかーんと笑った。おれも笑った。



きい能性に寄る。は奇妙」

うかんむりがある方が『寄る』だね!」

「そうじゃよ」


きい能性に寄る。は奇妙!」

 筆がまたまたぴかーんと光って、大夫はうれしそうにひげをなでた。



が群れる。の右側の郡」

「『群』と『郡』も難しいよ」

が群れる、と、の右側、おおざとがつくのが、地名に使われる『郡』じゃよ。の群れ、の郡と覚えてもよいの」


が群れる。の右側の郡。もしくは、の群れ、の郡」

 筆が光って、大夫はくるんと一回転した。



くのは往復。に住む」

「あ、『往』と『住』っていつも悩む」

「そうじゃろ、そうじゃろ。ぎょうにんべんが『往』なんじゃ。往復で覚えると分かりやすいじゃろ? 『住』は住所を思い浮かべるとよいぞ」


くのは往復。に住む」

 筆が光って、おれはよし、覚えた! と思った。



「罪はず。罰はってりっする、りっしんべん」

「あー、これもさ、同じに見えるんだよね。意味も似ているし」

「そうじゃろう」

「罪はず。罰はってりっする、りっしんべん。……非常階段の『非』は『あらず』なんだね」

「うむ」


「罪はず。罰はってりっする、りっしんべん。……わかった!」

 筆がぴかーんと光った。



きな恩。で思う。そして、があるのは奥」

「あー、その字も混乱していたやつ。みんな『思』に思えて」

「ふむふむ」

きな恩。で思う。そして、があるのは奥」

 ぴかーんと筆が光る。


「大夫、字、きれいだよねえ」

「三筆だからの」

 大夫は嬉しそうに、ほっほっほっと笑って、ひげをなでた。



の態度。ただの能力。熊は下に

「これも全然わからないやつ!」

「似ているからの」

「うん、下にがつくのが『態』、何もないのが『能』、動物の『熊』は下に、と」

「そうじゃ」


の態度。ただの能力。熊は下に!」

 ぴかーんと筆が光る。

 よし!



「大夫、次は?」

「こういうのはどうじゃ?」

「どんなの?」


どもが上の存在、下は


「『どもが上の存在』? あー! 存在って、どっちが上でどっちが下かわからなくなるんだよね」

「じゃろ? 子どもが上なんじゃよ」


どもが上の存在、下は

 筆がぴかーんと光って、おれは大夫と笑い合った。



わざの技術。えだ

「これも混乱するやつだ。てへんだから、手のわざだね!」

「そうじゃ。よく見るといいんじゃよ」


わざの技術、えだ

 筆がまたぴかーんとなった。

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