(3)漢字をダジャレで攻略せよ‼

第6話

「でもさあ。いくらフリクション使ったところで、覚えられないものは覚えられないんだけど」

「ほほう」

「うまく書けないし」

「そこはまあ、練習かの」


「てゆうか、漢字、どうしよう」

 おれはまた、な気持ちになった。あ、、だっけ。


「いつもどうやって覚えていたんじゃ?」

「うーん、先生にも友だちにも、『漢字は書いて覚えろ』って言われてる」

「なるほど、ふむ」

「でも、書くこと自体が苦手で」


「ふむふむ。……書いて覚えるのをやめてはどうかの?」

「え?」

「ダジャレで覚えるというのはどうじゃ?」

「は? ダジャレ?」

「つまりの」と言って、大夫は筆を持った。筆はぴかんって光った。



 大夫は白い紙に「識」「織」「職」と書いた。


「あー、難しい字。おんなじ字に見える」

「でも、左のへんの部分を、よく見るがいい」

「うん。えーと、ごんべんいとへんみみへん?」

「そうじゃ。どのへんにするかをよく間違えてしまうのじゃ」

「わかるわかる!」



「知識常識は口に出してう。組織を織る。の職業」



 大夫はそうしゃべりながら、紙にもまた文字を書いた。

「ほれ、おぬしも言ってみるがいい」


「知識常識は口に出してう。組織を織る。の職業」


「意識、博識、標識の『識』もごんべんじゃ。熟語の大半はごんべんの『識』を使うことが多いんじゃ。『組織、の職業』を覚えておけばいいじゃろ」

組織、の職業」

「そうじゃそうじゃ」


「知識常識は口に出してう。組織を織る。の職業! なるほど、覚えたかも!」

 とおれが言った瞬間、大夫の筆がぴかーんと光った。さっきよりもまぶしい光だった。


「おうおう、ほんとじゃの。覚えたらしいの」

 大夫は、ほ、ほ、ほ、と笑った。

「覚えたら、筆が光るの?」

「そうじゃ」

「へえ」

「それから、わしがおぬしに何かを伝えようとするときにも光る」

 筆がまたぴかんと光った。



「人が減る、が減る。で滅亡する」



 大夫はそう言いながら、紙に文字を書いた。

「『減』と『滅』って似てるよね」

「そうじゃ。中が口か、火かで異なる。だから」


「人が減る、が減る。で滅亡する」


「そうじゃ。ついでに、『人口』と『人工』も覚えておくといいぞ。人のを数えるから、人間がどれだけいるのかが、『人口』。人が作するから、『人工』。つまり、人の数える人口。人が作、人工」

「うんうん。だから、『人が減る、が減る』、になるんだね」

「そうじゃ」


「人が減る、が減る。で滅亡する。人の数える人口。人が作、人工」


 筆が大きく、ぴかーんと光った!

「覚えたらしいの」

 大夫は嬉しそうに笑った。



 その後も、ぴかんとぴかーんを繰り返した。

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