#19 増えたメンバーとダンジョン配信をした その結果

「アタシが決めるのかー……じゃあ、左!左手の法則ってのを聞いたような気がするから!」

「それじゃ左へ行こうか」

「やっぱ真ん中!」

「ん? 変更か? なら、真ん中へ――」

「やっぱ左! いや、真ん中!」

「どっちだよ」

「アタシとアイちゃんが左に行くから、アンタは真ん中に行ってよ」

「なんでだよ! カメラ1台しかないのに2手にわかれるなよ。っていうか、わかれるなら左手の法則のくだりはなんだったんだよ」


〈ツッコミキレッキレで草〉

〈ここからカイザーの単独配信?〉

〈何が何でもアイリオ写せ〉


 2手にわかれる案に対してコメントは賛否両論。どの道、コメントが全部賛成意見だったとしても俺は突っ撥ねる。

 だって、この1階層目には昨日の内にあるものを用意しておいたから。

 それを目にした瞬間を撮らない手はない。配信者のリアクションはリスナーにとって配信を観る醍醐味の1つだから。


「うるさいなぁ。アンタも連れてけばいいんでしょ。素直に寂しいって言えばいいのに」

「別に寂しいから言ってるわけじゃなくて……」

「なら、何?」

「いや、もうそれでいいです」

「あははは! やっぱ寂しいんじゃん! 最初からそういえば10キロくらい後ろからならついてくる事を許してあげたのに」

「10キロって、それダンジョンの外だろ。カメラをどんだけズームしても撮れねぇわ!」

「あははは! 面白い事言うじゃん」

「いや、事実だろ」

「ま、何でもいいじゃん! 次に行こ行こ! ね? アイちゃん」

「……うん……早く進んで魔法教えてもらう」


 若干振り回されてる感はあるけど、配信としてはありなのかもしれない。ワガママでやりたい放題の言いたい放題はある意味、個性として捉えるとキャラが立っていると言えると思うからある程度は好きにさせておこう。

 ただ、やり過ぎにならないように偶には抑える必要はあるだろうが。


 結局、左の道を選んで曲がりくねった道を進む。2回目の分岐からはどの道も道幅が広く、天井も少し高く作られていて戦闘がやりやすい仕様になっている。

 ダンジョンの様子や感想、推測などを口にしつつ10数分くらい歩いて広い空間にたどり着いた。


「広いとこに出たね。ボス部屋かな?」

「……ボス……怖い」


〈ボスくるか?〉

〈1回帰ってみる?〉

〈何も居なくね?〉


 この場所にボスなんてものは存在しない。存在するのは俺が用意したものだけ。動いていなければの話だが。


「……ボス……いた?」

「うーん……ボス部屋だと思ったんだけど……あっ! 居た! あそこの岩陰!」


 リオールが大きな声をあげて指をさすと、アイは身をビクッと震わせる。

 反応したのはアイだけでなく、岩陰に隠れていた魔物も驚いて錯乱したのか俺達の前に飛び出してきた。

 そう、俺が用意したものとはこの魔物なのだ。

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【完全初見】ダンジョンマスターがダンジョン配信に便乗してみた 〜唯一、俺のダンジョンを配信していた陰キャぼっちの女の子と共に俺のダンジョンを人気にしてダンジョンに来る人を増やそうと思います〜 六花 @rikka_mizuse

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