抹茶ティラミスで一息
国道一号線。静岡県に入ってからは起伏が少なく、どうにも退屈することが多い。通り慣れてしまえばなおさらのこと。そんな道を通る時、初めて訪れてから、たびたび寄り道するようになった場所がある。
掛川市にある、日本茶きみくら。文字通り、お茶屋さんだ。
一階は売店となっており、日本茶や茶道具、お土産が販売されている。二階は茶寮となっており、抹茶や季節のスイーツを楽しむことができる。窓からは日本庭園を眺めることができ、贅沢にスイーツも楽しめる。もっぱら、わたしの目的はその二階の茶寮である。
注文するのは、抹茶ティラミス。今日では珍しくはない一品であろうが、お茶屋さんで食べるとなるとなると、これが一味違う。その見た目からして違うのだ。
振り掛けられている抹茶。この色が濃い。それでいて、層にも繊細さを感じる。また、その大きさも絶妙で、大きすぎず小さすぎずと妙な上品さも感じてしまう。
とは感じつつ、欲望には忠実に早々にフォークを立てる。クリームからスポンジへと沈むフォークの僅かな振動を指先に感じながら、一口分を掬い取って口に運ぶ。控えめなクリームチーズの甘さに、口に広がる抹茶の香りとわずかな苦味。その両者がゆっくりと合わさる。しばしその余韻に浸り、温かい煎茶で喉を潤す。
思わず、ほぉ〜と一息ついてします。抹茶ティラミス、なんと落ち着くことか。
粛々と手を進め、舌鼓を打ちながらも窓からの日本庭園を眺める。食べているものと空間により、一息はつくものの、なぜか背筋は伸びる。妙にかしこまってしまうのだが、それもまた心地が良い。やはり、日本人は遺伝子的にお茶に安らぎを感じるのだ、なんて悟りじみたことまで頭をよぎった。
気が付けば、皿も湯呑みも空いていた。誰と席を共にしたわけでもないのに、綺麗に口をぬぐい、小さく手を合わせて「ごちそうさま」と独りごつ。それを区切りに、再びほぉ〜と一息。
なんとも贅沢な一息だ。
前述したように、お店には度々足を運ぶ。抹茶ティラミスはいわゆるレギュラーメニューでいつでも食べれるため、季節限定のパフェが楽しみとなっている。旬の甘味を視覚、味覚共に楽しむことが出来る。
そろそろメニュー変更した頃合いだろうか。ここ最近はご無沙汰であったから、確認して食べにいかなくては。
ほうび日和 @ogawa96901
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