第6話 風 その1

 いやはやしかしである。


 ついに明かされるであろう、俺が何者かと言う話……。


 わざわざこんな場所に出向いた自分で言うのも何なのだが……。それがとにかく長かった……。


 時は数千年前の初代の千年求敗まで遡り……。その時に九人の英雄が魔神を打ち負かしただとか……神と契約を交わしたとか……とにかく良く有るスマホゲーム的な設定をこれでもかとぶっ込んできやがった。


 最初にも言ったと思うんだけど……。俺ってばゲームのそういう設定は読まずに進めるタイプなんだよね……。


 でも。


 取り敢えず要点だけはここでまとめておかなきゃならない。だって、こんな魔王殿まで来てやっぱ面倒くさいから帰るわ……じゃあ、みんなも納得しないでしょ。


 いやいや……もしかしたら、そっちのほうが良いかもしれないな……。


 だって、ここで長々と俺が語っちゃったとしても、みんな直ぐに忘れちゃうと思うし、そもそも、今聞いたばかりのうろ覚えの設定を上手く説明出来る自信が無い。


 それに彼らの話ってさ……


 簡単に言っちゃうと、3年後に『千年大会』と言うを決める大会が開かれるよ~って。そんな話しだったからさ。


 まぁね。確かに俺は強いよ。そんな大会の話が俺に回ってくるのは当然っちゃ当然だ。だってさ、俺が出ない大会で勝ったとしても、最強なんて恥ずかしくて名乗れないもんね。


 でも、そんな上から目線で舐めてかかってた俺は、馬鹿でした。


 読んで字のごとく千年に一度開催される『千年大会』は、この前の王都で開催された誰もが参加出来る様な、お遊びの武術大会とはわけが違うのだ。


 どんなスポーツだって、毎年行われる世界大会よりも、4年に一度のオリンピックのほうが盛り上がるだろ?それと一緒だよ。って言うかこの大会は千年に一度だからね。


 もちろん、ちょっと強いだけの普通の人間なんか参加すらできないんです。


 何を隠そうこの『千年大会』は、こちらの世界に九人存在すると言われる魔王の中から最強を決めると言う、なんとも恐ろし大会なのだ。


 

 でもさ。そんな大会……はっきり言って俺とは全くの無関係だよね。


 だって……。


 俺ってば、行き当たりばったりで邪神を倒しちゃったり、伝説に二つ名を残しちゃうほどの存在だったりするわけだけど……


「俺って、一応人間じゃん?」


 まぁ目の前のおっさんも魔王だったりするみたいだけど「人間の俺なんか参加資格すら無いじゃん」なんて話半分に聞いていたら、なんてことは無い。実は俺も『魔王』だった……。


 いや、なんてことは大いにあるよ。俺が魔王ってどういう事なのさ?



 ちなみに……。目の前のルナとか言うちっちゃな女の子も魔王だった……。


 そして、あの魔法が得意で自分勝手なアイツも魔王だった……。



 この世界には九人の魔王が存在する。それは数千年の遠い昔、この世界を救った九人の英雄達。


 彼らのことを、この世界では魔王と呼ぶ。


 らしい……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る