第3話 牛頭山の魔王 その3
ここからは弟子達のことは一旦横に置いておいて……。私、カイル=バレンティンのターンである。
この際だからはっきり言おう。
正直なところ、恥ずかしながら俺自身も『混天魔王』のことをはっきりと覚えているわけではないのだ。ただ、砂漠の先にこの牛頭山を見つけた時に……突然記憶の扉が開かれて、奴に会うことが必要だと直感しただけだ。
だから……。俺ががいくら魔王の知人だからと言って、温かく迎えられる保証は無い。
はっきりとは分からないけど、おそらく数千年ぶりの再会なのだ。相手も俺と同じ様に当時の記憶を失っているかもしれないし、もしかしたら再開と同時に刃を向けられるかも知れない。
いや、それ以前に数千年の時を生きられるなら、それは神か仙人か、はたまた生ける屍か……。魔術師か、エルフか……。まぁ結構身近にもいるか……。
とにかく。
はっきり言って相手は自らを魔王と名乗っている変人だ。いやもしかしたら本当に魔族を束ねる正真正銘の魔王なのかもしれない……。俺はそいつの正体がはっきりと分かるまでは、その自称魔王とやらに、弟子達を合わせるわけにはいかないのだ。
でも、どうしても会わないわけにはいかないんだ。なぜなら、俺はこの魔王の弟子だから。
帰ってきたら「ただいま」は絶対に言わなきゃだめだよね。
さて、そんな訳で俺はさっさとこの山の頂上まで登らなきゃいけないわけですが……。
死地からの復活によって、まさに絶技とも言える
しかし……この能力も、エイドリアンが邪神復活させなければ、今頃俺は、かわいい弟子達と共に(エデンの文句を聞きながら)えっちらおっちらと階段を登っていたことだろう。
そうすれば「魔王を弟子達に合わすわけにはいかない」なんて格好いいセリフも無かったわけで……ある意味あのメイドには感謝なのである。
そして……。
山頂を隠す雲を突き抜け、約一時間ほど駆け抜けた頃。左右に突き出した二本の牛の角の間にその建物はあった。
その名を……『
それにしても、これはかなり重厚な造りの楼門である。その姿はこちらの世界に来てからほとんど見かけることのなかった、いわば東洋的な建築様式。瓦屋根に朱塗りの柱。そして頭上には、なんと漢字で『混天魔王』の文字まで掲げられているではないか。
取り敢えず……細かい設定は置いておいて……。
何やらここに来て俺のストーリーが王道ファンタジーの世界から、なんだか西遊記じみてまいりましたが……。まぁこの世界は広いということで納得をすることに致します。
はてさて鬼が出るか蛇が出るか……。
その巨大な扉が、突然ギリギリと大きな音を立てて開いた。
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