第13話 カイル 明日のために…… その6
さて、それから俺は妹の行動を見て愕然とするわけだけど、
その前に一言、言っておかなければならない。
「俺は、全くそんな事考えてもいなかったし、ましてやそんな事が出来るなんてこれっぽっちも考えていなかったからな!」
はい。では、妹が俺に見せてくれた特訓の成果を皆様にもご報告しよう。
まず、ナチュラルに彼女はこの家の中で一番広い部屋を選択しました。それはかつて両親が寝室として使っていた今は本棚が一つだけ置いてあるカラッポの部屋。
そして妹は得意気な表情で俺が教えた通り、カラー石ころを「えい!」って部屋中に広がるように投げました。
どう?
なんか違和感ないですか?
俺はむっちゃ違和感あったよ。
だって……。
「部屋中にぶち撒けたら、あっち見たりこっち見たり……一瞬で数えられるわけないでしょうが!」
ヤバ……。思わず口に出ちゃったよ。
そんなんね、目の前の1メートル四方くらいにばら撒かれてるから出来るんであって、ひと目で見渡せないこんな十畳間くらいの部屋にぶち撒けたら……。難易度むっちゃ上がるでしょうよ。
俺はさ、
「出来るようになったら工夫して難易度を上げていきなさい」
って、師匠っぽく格好をつけてあの時確かに言ったよ。でもさ、普通は石の数を増やすと思ったの。十個を二十個にしたりして。なのに石の数増やさずに広範囲に投げて視野を広げるなんてね。発想が斜め上すぎるでしょ。
まぁ、もともと俺なんか妹しか見てない視野の狭いやつだし、小さいうちから妹の視野を広げてやる事は確かに悪い事じゃあ無い。そう思うよ。
だけど俺は、あまりに呆気にとられて。
あぁなるほどね。だから俺はこの部屋に入ると躓いていたのか……。なんて感想しかありませんでした。
ホント、どんだけ石をばら撒くのが好きなんだこの妹は。
ただ。
妹もまだこの視野で石の数を数えられるかと言うと、それはまだ完璧ではない様子。
でも……。怖い事にそこそこは出来てんだよなぁ。
ホント信じられないけどさぁ、このままじゃあ来年の秋を待たずに池のトンボの数を完璧に数えられる様になっちゃうんじゃないかなぁ。
って感じで、この時既に人としてヤバイ領域に足を踏み入れつつある妹なんだけど……。俺はさほどの心配をしていなかった。だってたかだかトンボの数を数えられるだけでしょ?そんな気でいたんです。
だから、この時の俺は、むっちゃくちゃ妹の事を褒めてやったよ。
そして、褒めに褒めまくってたら、次の週には十畳間にばら撒いた石を完璧に数えられる様になってたの。
「まぁ素晴らしい」
まぁ、俺もこの時はまだ、この異世界って言う場所の仕組をまだ理解してなかったんだろうな……。妹の成長なんて、いずれ頭打ちになって止まってしまうって、そう高を括っていたんだ。
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