人類最後の1日
@ayatohazuki78
第1話 初めての終わり
「...俺の名前は...いや、もう名前なんて使わないか。」
男は今朝のニュースを見て、全てのやる気を失っていた。
「誰もが一度は考えるだろうな。もし地球が一日後滅亡するなら何したいかって」
時は35xx年。世界の人口はすでに一億を切っていた。そして数千年続いてきた地球にも、ついに終わりが来たのだ。
「...っ、とりあえずコーヒー」
この男のルーティン、それは毎朝7時45分に始まるニュース番組をコーヒーを飲みながら8時35分に家を出るまでゆっくりすることだ。
「......同僚から電話か。そうか、こいつと話すのも今日が最後、か。」
この男の勤めている会社で、唯一の同僚、A子がいた。その女はいつも仕事熱心で営業成績一位は当たり前と謳われていた。
「そういえばお前とも今日でお別れだな。どうして連絡してきた?」
「やっぱりその声、会社来る気ないでしょ」
「お前はいるのか?」
「当たり前じゃない。親も友達もほどんど死んでるんだから、生きてる知人はせいぜいあんたぐらいなのよ」
深刻な環境汚染が原因か、人類が衰退しやすくなったのかはわからないが、数百年前から平均寿命は年を重ねるごとに落ちていった。去年の平均寿命は、約35歳であり、だいたい2人に1人が寿命で死に、他は自殺か他殺だ。人類が環境に適用したことによって病気というものは限りなくないものに近しくなったが、その分年齢を重ねることが難しくなっているのだろうと、人類は薄々勘付いていた。
「まあ、俺らが明日死ななくても数年後には死んでんだからな」
「いいから、とりあえず会社に来てくれない?最後は1人で会社とか絶対に嫌なんだけど」
男は驚いた。普段から仕事のことにしか目がなく、恋愛や趣味といったようなことに目を向けず営業のことしか考えていないような彼女の口からそんな言葉が出るとは思っていなかったからだ。
「お、おう、、とりあえず、コーヒーを飲み終えたら向かうよ」
「頼むわ」
そう言ってA子の方から電話を切った。
「予想外だ」
時刻は午前8時5分過ぎ。予定よりも30分ほど早い出社になりそうで男はまた少しがっかりした。
「会社行って、何するんだよ...」
そうぼそっと呟いてから、会社に行くための小型飛行機に乗り込み、家を後にするのだった。
人類最後の1日 @ayatohazuki78
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