第41話 オンボロの約束のあの場所

 一体何の罰ゲームだよ、こんにゃろ。


 志津香に潰れかけの遊園地に連れてこられたと思ったら、変なふたりがやって来て、野郎とジェットコースターとお化け屋敷でペアにさせられる始末。


 しかも、お化け屋敷が苦手なのか、横溝の野郎抱きついて来やがった。


 かと思ったら気絶するし、お化け役の人雰囲気ぶち壊しで、『非常口あっちっすー』とか言うし。


 どないなっとんねん。


「──って、志津香」

「あ、蒼」


 横溝を引きずってベンチに転がしておこうかと思ったら、志津香が成戸さんを膝枕していた。


 おい、成戸、そこかわれ。


「志津香のとこもか?」


 本心は心の奥底に捨て、仮面を被るように質問を投げた。


 見る限り、成戸さんもお化け屋敷で気絶した様子だ。


「そう言うってことは、横溝くんも?」

「まぁなっ、と」


 横溝を適当にベンチに転がして、空いているスペースに座る。


「これからどうする?」

「あはは。どう、しよっか」


 普段、クールな志津香も今の状況には参っている様子だ。


 そりゃ成り行きとはいえ、四人で行動していた二人がグロッキー状態。


 これを放置するのも人としてどうかと思うしなぁ。


「帰る?」


 志津香の提案はちょっとばかし寂しいが、それが良いと思える。


「そうだな。二人の意識が戻ったら帰ろうか」


 志津香の提案をのんだところで、「まちな、さい」と苦しそうに起き上がる成戸さん。


「このまま終わって、良いのかしら?」

「終わってるのはお前だぞ」

「黙りなさい男子っ」


 手で左目辺りを抑えてながら言い放ってくる女子。


 なにこのこ、なにか覚醒したの? 高二なのに、中二病覚醒した? 果たして、それは覚醒と呼べるのだろうか。


「あんた、このままので、いいの? 己が覚悟を証明しなくてもいいの?」

「己が、覚悟……そう、だね。私、覚悟を見せなきゃ」


 志津香、優しいから乗ってあげてる。成戸さんのテンションに乗ってあげてる。


「そうこなきゃ」

「ありがとう成戸さん」

「……麻衣」

「え?」

「麻衣って呼びなさい。わたしはあんたを志津香と呼ぶわ」

「麻衣……。うん! 麻衣! 私、己が覚悟を証明してくるね!」

「ここは任せて先に行きなさい。後で必ず追いつくから」

「約束のあの場所で!」

「約束の、あの、場所で」


 唐突に芽生えた女の友情を背に、俺は困惑のまま志津香に誘われていった。







「ここが己が覚悟を証明する場所か?」

「……」

「それとも、ここが約束のあの場所か?」

「……」

「どちらにしても、今にも崩れ落ちそうな場所だぞ」

「あ、ははー。ま、まぁノリってやつだよ。うんうん」


 志津香は苦笑いを浮かべて誤魔化した。


 目の前に見えるのは、ほんとなんでその色をチョイスしたの? 何色なの? ってのが色とりどりに施されている観覧車。


 んで、もうボッロボロなんよ。なんだろ。人が乗ったら潰れるだろって感じ。


「乗るの?」

「ここまで来たら乗るでしょ」

「今ならまだ引き返せるぞ」

「あのテンションのところに戻るなら突き進む」


 もう止まらない志津香は、そのまま観覧車へと突っ込んだ。


 そんな彼女の覚悟(笑)を受け取り、俺も続く。


『お二人様、いらっしゃいませー』

「って、なんなの? なんで受付が死神なの?」


 なんか知らんが、死神の格好した人が観覧車の受付してた。


『地獄へのゴンドラへようこそー。なんちゃって』

「洒落になってないぞ」

『いやー、すみません。人手不足で、こんな格好ですが中身はイケオジですよ』

「イケオジは自分でイケオジって言いませんよ」

『あはは。すみませんね。全部冗談ですから、ちゃんと……』


 ぎこぎここここ!


『ぬわっと!?』


 突如聞こえてくる異音にイケオジの死神がめっちゃ驚いていた。


『安全ですよ』

「ちょ、今の大丈夫なのかよ」

『だいじょーぶ、だいじょーぶ。はーい、ご案内。カップル様にはピンク色のゴンドラでーす』

「それ、ピンクと呼べるの?」

「ほら、蒼。行くよ」


 志津香は肝っ玉が座っているらしく、何の迷いもなくゴンドラに乗り込んだ。


 ええい、志津香が行って俺が行かないなんてなるものか。


 意を決して俺もゴンドラへと乗り込んだ。


『行ってらっしゃーい。サービスしとくよー』

「サービスとは?」

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クールなあいつをデレさせろ すずと @suzuto777

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