ブルべ、夏、侵攻中

@takatakatanaka

第1話、私、夏、侵攻中、

「暑い」、それはこの夏を体験した全日本人の総意だと私は思う。

イヤホン越しに聞こえる蝉時雨の中、2020年代のポップな歌は私を海へ駆り立てようとするが、今時海へ行く人なんていない。

あまったるいジュースをのどに流しながら、コンビニで涼む。

何気ない日常の中、ふと目の前の誰かにゆらゆら笑う陽炎が重なったとき、

私はいつも。


人生に意味なんてあるのだろうか。

私も実は陽炎みたいなもので、一瞬の揺らぎで消えてしまうような、何かの手違いで存在してしまっていたような、そんな何かなんじゃないだろうか。


そんな問答に答えも意味もなく。募った問いも3歩歩けば忘れるだろう。

ペットボトルを手近なごみ箱にシュートインし、家に帰ろうとした。

その時、前を通った女子高生からこんな声が聞こえた。

「来年の夏はもっと熱くなって平均45度を超えるんでしょ?私耐えられないよ~~」

私はそのほんとかどうかもわからない井戸端気温予報を、真に受け、普通にキレた。

大の大人だが、汚い手法も時にはためらわず、泥をすすって生きてきた、大の大人だが!

時には通さねばならぬ仁義もあるだろう!

私はこの熱帯地域となってしまった日本を捨て、お世話になった会社を捨て、育ててくれた家族を捨て!

北上する。

北上するのだ。


悪いが背に腹は代えられない。

快適に生きれる生活環境は何にも代えられないのだ!!!



私、今年の夏で変わります。







私、夏、侵攻中








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