若葉は 君に微笑み
梅林 冬実
若葉は 君に微笑み
輝く若葉を掻き集め
澄んだ水に浸してできた深緑を
宿したような瞳はやはり美しく
赤子のみたく滑らかな肌は
放課後のクラブのお陰で褐色がかり
意志の強さを感じさせる眉と
引き締まった唇に
少し長めの
さり気なく流した髪が
厭味のなさに吐き気がするほど
似合っている
ダイニングテーブルに
顔を横にして突っ伏す
悲哀の色が増すほどに
日頃の躍然ぶりを思わせる
不思議なものだ
苦しむ姿さえ僕を凌駕するとは
常に指弾される辛苦が心を蝕み
食欲を満たせば瞬間失せる
不平不満に振り回されていると
鏡の向こうには人型の肉塊が
こちらをじっとり凝視していて
日夜どうにも落ち着かない
悲しみの理由はなんだい?
僕がきいてやろうじゃないか
そんな口が叩けたなら
僕にもいくらかマシな日常が
幕を開けるのだろうか
美しい君に
僕は敗北してきた
それはきっとこれからも
延々続くのだろう
悲しみとは無縁の君が
困難でいるふうだと
僕は酷く混乱してしまう
若葉は僕に微笑まない
頑強な座瘡は
赤子の頃からこの顔中に
広がっていたのではないかと
疑ってしまう
強大な威力を誇るシャボンも
僕の狐臭に屈する
幾多の柑橘に一滴
蜂蜜を落としたような
甘い香りのする君には
無縁の苦衷であろう
なのに君は今
猛烈な悲しみの中にいて
僕は声をかけることさえ
できずにいる
可哀想に
僕にできることがあるなら言って
そんな風に声掛けしたなら
君も少しは元気になれるだろうか
お前なんかに用はないと
語気を強めるだろうか
いいや それはないね
君はそんな奴じゃない
誰にでも優しい君は
誰からも愛されていることを
僕は知っている
だからこそ僕は
君の傍に立ち尽くすんだ
どうしたの
何があったの
悲嘆にくれた君のコアは
何を見たのさ
何を知ったのさ
僕にはさっぱり分からないね
若葉は 君に微笑み 梅林 冬実 @umemomosakura333
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