どきどき夜食

 小さいころから、私の家には夜食という文化が存在しなかった。

 だから、本で読んだり、受験期に友達の話を聞いたりしていいなあと密かに憧れを抱いていた。今日は、そんな小さな夢を叶える日。

 最近流行りの韓国のインスタントラーメンとか、久しぶりに菓子パンとかいろいろ考えたけれど、やっぱり夜食と言えばおにぎりでしょと思い立ち、おにぎりを作ることにした。

 おにぎりは揚げ玉とだし醤油、万能ねぎを炊き立てのご飯と和えて海苔を巻いた懐かしいお母さんの味と、シンプルなしゃけおにぎりを用意した。ご飯は少し多めに炊いたから、明日の朝の分まで用意しておこう。小さい頃はあつあつのご飯をおにぎりにするのが難しくて、お母さんがぱぱっと握っているのが魔法のように見えたっけ。そんなことを思い出して自分の成長を感じて微笑ましくなる。

 あとはせっかくなので豪勢に卵焼きもこしらえる。早起きするとあつあつのだし巻き卵が食卓に並んでいて嬉しかったなあと浸った。お母さんには遠く及ばないけれど、今では自分なりに作れるようになった。

 手軽に、でも心を込めて作った夜食を「いただきます」と声に出してからいただく。深夜にご飯を食べるのはなんだか少し落ち着かなくて、どきどきする。でも、やはり作り立てのご飯はどれもとびきりおいしくて、食べ進めていくうちにちょっとした罪悪感は消えてなくなっていった。ほんのり甘いだし醤油がふわりと香るお母さんのおにぎり、ほぐしたしゃけがたっぷり入ったしゃけおにぎり、そしてじゅわっとだしが染み渡るだし巻き卵。

 これが幸せの味というのだと実感した、ちょっぴり特別な夜。

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おいしい食卓 藤間あわい @boctok2226

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