うきうきスイーツ

 茹だるような暑さが続く八月。久方ぶりのまとまった休みがやってきた。

 せっかくの休みだから自分を甘やかしてあげようと今日はスイーツを作ることにした。あまり手順が多いと疲れてしまうから、簡単なレシピで。

 今日作るのは桃とアールグレイのレアチーズケーキ。SNSでたまたま見かけて作りたいと密かに思っていたレシピだ。桃は旬が去ってしまうのが早いから桃がおいしいうちに作れるか心配していたけれど、まだスーパーにはおいしそうな桃がずらりと並んでいた。とびきりみずみずしくてじゅわっと甘い桃は、私の大好きな果物だ。

 出来上がりを想像してるんるんしながら調理に取り掛かる。まず、あらかじめ冷蔵庫の外に置いておいて柔らかくなったクリームチーズをボウルの中で練る。クリームチーズが滑らかになったら、きび砂糖を加えてまた練る。全体が混ざったら無糖のヨーグルトを加えてよく混ぜる。そうしたらゼラチンを加える。今回は時短のためにゼラチンパウダーをお水に入れてふやかしておいてレンジで少し温める。ゼラチンが溶けたら、ボウルの中に加えて混ぜる。

 次に生クリームの中にアールグレイの茶葉を入れて沸かす。お母さんが送ってくれたとっても香りの良いアールグレイの茶葉。お母さんは紅茶が好きな私のために、季節ごとにいつもいろいろなフレーバーを選んで送ってくれる。茶葉を通してその温かい優しさに触れて笑みがこぼれた。

 生クリームがふつふつと沸いたら十分ほど置いておく。部屋いっぱいに広がるアールグレイの香りに幸せな心地を覚える。十分経ったら茶葉を濾してボウルの中に加えてさっと混ぜる。

 これでケーキの素は完成。ケーキの型に注いであとはお昼ぐらいまで冷やすだけ。その間に好きな作家さんの本を読んでしまおうか。

 クーラーの効いた部屋の中で本を読みながらうとうとしていたらいつの間にかお昼になっていた。今回のお話も素敵だったなあとじんわりとした読後感に浸りながらお昼をいただく。お昼は冷蔵庫の掃除もかねて具沢山のチャーハンを作った。この、その時々で味の変わるごちゃごちゃしたチャーハン、おばあちゃんのお家に行った時を思い出す。おばあちゃんの料理はいつだっておいしくて、あの味には一生敵わないんだろうななんて思う。

 そして食後のスイーツに待望のケーキをいただく。ケーキが冷えて固まっているのを確認してから、デコレーション用の桃をカットする。半分に切れ込みを入れたらくるっとねじって半分こに。それぞれ三等分にしたら種と皮を取る。柔らかい桃を切るのは難しくていつもぐちゃっとしてしまうけれど、今日は上手く切ることができて嬉しい気持ちになる。

 アールグレイのレアチーズケーキにたっぷりの桃を乗せる。ほんのりと色づいたケーキに桃色が映えて華やかだ。

 早速ケーキをカットしていただく。チーズケーキのほのかな酸味と香り高いアールグレイ、そして甘くみずみずしい桃が合わさって極上の味だ。あまりのおいしさに思わず「おいしい……」と声が出た。

 ワンホールひとりじめしてもいいけれど、こんなにおいしくできたのだから誰かを呼ぼうか。ぱっと浮かんだのはしばらく会えていないお母さんの顔。久しぶりに会えたら嬉しいな、そう思いながらメッセージを打つ。すぐにきた返事に思わず笑って、幸せが溢れた。

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