最終話 荒れ模様の空

「あーせっかくの夏休み終わっちったなー」


 始業式を終えて教室に戻ると、深山は俺に見せつけるようにハンディファンを2台使い始めた。


「どうよ、少しは休めたんじゃないか?」


 俺の物欲しそうな目線に気づいたのか、俺の顔に向かってハンディファンの1台を向けた。


 俺はその風に目を細めてながら、頭をかいた。


 ◇


 白鳥先輩が去った後、鷹井先輩を先頭に元インマーズの面々が体育館裏に現れた。


「終わったんだな」


 鷹井先輩は笑みを浮かべて言った。

 先輩の笑った姿を初めて見た気がした。


「はい、最善の終わり方ではなかったですけど、一応、形にはなりました」

「今はそれでよしとするしかないだろう」


 鷹井先輩はそう言うとクルッと振り返り、元インマーズを見た。


「お前たちも散々この学校をかき乱してくれたからな。ペナルティを与える。……夏休み期間、お前たちから新藤新への接触を禁じる」


 瞬間、非難轟々雨霰。

 特に森永先生はキレ散らかしていた。

 が、さすがは生徒会長。鷹井先輩は指揮者の如く彼女たちをうまく宥めた。

 

「これでいいか? 新藤新」


 鷹井先輩は俺に向き直ると、疲れ切った顔で言った。


 悪いわけがない。

 むしろ、なにからなにまで申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「助かります。ありがとうございます、鷹井先輩」


 ◇


「ああ、本当に、なにもない1ヶ月だった」

「なんだよ、嬉しくなさそうだな」


 夏休み前のことを振り返ってポツリと呟くと、深山が的確なツッコミを入れてきた。


「そりゃそうだろ! なにもないんだぞ! 楽しいイベントも新たな恋も、なにもかも!」


 俺は机をペシペシと叩いて抗議した。

 これだったら淫魔どもに絡まれていたほうがよっぽどマシだった……って、なに考えてんだ俺は! 


「いや、まあ、よく休めたな」

「……いきなり静かになるなよ。けどまあ、元気そうでなによりだ。お前も、女子たちも」

「え?」


 深山は窓越しに校庭を指差す。

 指の先を追いかけていくと、そこにはいつもの光景があった。


 炎天下の中、鷹井先輩が元インマーズたちを追いかけ回している。心なしか鷹井先輩も楽しそうに見えた。


「……まったく。捕まらないうちに帰ろうぜ」


 俺は帰り支度をしてスクールバッグを手に取る。

 深山も俺に合わせるようにしてスクールバッグを肩にかけて立ち上がった。


 ……俺の学校生活は、まだまだ快晴の空のようにはいかないみたいだ。


 ふう、とため息をついて、俺たちは帰路についた。



 〜完〜

 

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淫魔に囲まれるドキドキハーレム学校生活! ~けど俺は縦ニットでロングスカートの清楚な女の子が好きだからお断りします。おい、こら! お断りだって言ってるだろ! 来るなぁぁぁぁぁっ!~ 界座 道化 @dokeo

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