Ver6.8 霊界交信

 巫巫道堂で集めた資料をまとめ、私とジゥはその真実にたどり着く。


「パーティーの参加者は、あそこで故人と会話をしていた、これは確定ですね」

「霊界交信……か」


 霊界交信とは、この世とあの世を繋ぎ、生者が死者と対話すること。

 そんな事が可能なのか?

 私達から言わせれば『可能』だ。


 だが――


「あそこにシャーマンや巫女はいなかったぜ?」

「隠れていた可能性はないと思いますね」

「巫女やってるような奴なんて、正気じゃねーもんな」


 自虐である。


「そうなると、どうやって霊界と交信していたのか……疑問が残りますね」

「当然、あのチップが原因だろう」


 会場から持ち帰ったチップ。

 傍から見た感じでは、ただのデータチップにしか見えなかったが――


 専門家の回答を待つとしよう。


「クソンからの連絡はまだですか?」

「アイツのことだから、ゲームしてて気づいてないんじゃね」

「確認して下さい」

「えー……」


 と、言いながらスマホを確認すると――

 連絡が来ていた。

 しかも、チップの結果も添えて。


「……ごめん、連絡来てた」

「だろうと思いました」


 あまりにいつものこと過ぎて、逆に怒られない状況。

 それはそれで悲しい。


「で、結果はどうでしたか?」

「うーんと……接続仲介チップで間違いないらしい」

「一般的なネットワーク接続チップですね」

「ただ、接続先がURLやコード指定じゃなくて、距離と位置が書かれてるとさ」

「……距離と位置? なぜ?」


 ジゥの困惑も当然である。

 普通、ネットワーク接続に距離と位置など必要ないからだ。

 いや、必要なものもあるが……


「それともう一つ、このチップは電波を発信して、受け取ってるらしい」

「……それじゃまるで」

「『小さなパラボラアンテナみないなもの』、クソンはそう言ってる」


 この言葉を聞いて、完全に繋がった事がある。


 どこかに送信するチップ。

 場所は不明。

 距離と位置。


 ヘヴンズ・ゲートと同じだ。


「……トクイチが関わってるな」

「貴方が出会ったと言っていたオートマトンのことですね?」

「ああ、ムカつく上に、頭もおかしい奴だよ」

「確か、チップを使って人間とオートマトンの意識を吸い取ったとか」

「そして、得体のしれない『何か』を降ろしていた」

「そうなると、本当は霊界交信なんてしてないかもしれませんね」

「ああ、話している相手は全く別の得体のしれない『何か』だと思う」


 ジゥは少し考え、提案してきた。


「直接聞いてみましょうか」

「え、トクイチに聞くのか?」

「……何言ってるんですか?」

「え? ……ああ、そういうことか」

「そうです。ロバートの方に聞くんです」

「と言っても、ロバートに会うなんて無理だろ。相手はガチガチの上級役員だぞ」

「セキュリティに守られてて絶対に会えないでしょうね」

「それに、妹にすら隠しているような奴が、快く話し始めるわけなくないか?」

「そこは少し考えてあります」

「自白剤でも飲ませんの?」


 ジゥは呆れてため息をついた。

 

 なんだよ。


「クジ、我々はなんですか?」

「……巫女だけど?」

「じゃぁ、話を聞く相手は別に人間である必要はありませんよね?」

「…………あ」

「そう、ロバートが連れ歩いている『オートマトン』に聞きましょう」




―――Ver6.8 霊界交信 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る