Ver6.2 約束という枷
「私のお願いを聞いてくれた、何でも質問に答えてあげるわ」
ニッコリと笑ったその顔を、マヨイガはこちらに向けた。
頭の後ろが熱くなるのが分かるほど。
信じられないほどの怒りがこみ上げて来た。
だがダメだ。
これも全部あいつの思い通り。
ここで怒りをぶつけても、あいつの手のひらで踊らされるだけだ。
冷静に。冷静に。
「今すぐ帰れ」
「それでお願いの内容なんだけど、ロイヤル区域のとある場所でパーティが開かれてるみたいなの。そこの調査をお願いしたいの」
案の定、話を聞かない。
分かっていたことだ。
「帰れ。お前の依頼も聞く気はない」
「反抗期ねぇ~。でも、そのパーティの内容が霊的なものだったら……どうする?」
霊的なもの?
オカルトクラブみたいなものか?
どちらにしろ、私の気を引こうとしているだけだ。
興味を示すこと事態がこいつの思う壺。
「帰れ」
できるだけ、興味を記さないように努めた。
それを理解したのか、マヨイガ諦めた様子で立ち上がった。
「ま、お線香はあげられたからいいわ。また来るわね」
「もう来んな」
マヨイガはこちらを見てくすりと笑った。
なんだよ。
「いいクジ。大事なのは『誰がやったのか』ではなく、『何をやったのか』なのよ?」
そう言うとマヨイガは部屋を後にした。
……何が言いたかったんだ?
お父さんが何かをしたということ?
それとも、そのパーティのこと?
また意味深なことを言って私を惑わすつもりか?
……ああダメだ。
完全にあいつのドツボにはまってるだろこれ!
何とかしてあいつの思惑から離れねーと……何をする?
トナンで博打でもする……?
それとも霊感商法でもやるか……?
などと、できうる限りのやばいことを考えていると、一通の電話が入って来た。
相手は、ジゥだった。
「仕事の話――」
「やります!」
即答である。
「……やばいものでも食べたんですか?」
「うるせぇ! 今は働きたい気分なんだよ!」
「あなたにそんな気分があったなんて、初めてしりましたよ」
「すぐ行くから楽しみにしてろ!」
「……なんだか気持ち悪いですけど……まぁ、待っています」
電話を切り、急いで外へ出る。
仕事をしていれば少なくともあいつの思惑通りにはならないだろう。
ジゥが引いてたが、そんなの今は関係ない。
今は一刻も早くあいつの思惑から外れないといけないのだから。
そう考えながら巫巫道堂へと急いで向かう。
だがしかし。
私は甘かったのだと後に気づいた。
あいつが。
あの化け物が張り巡らせていた運命の糸は。
想像以上に強固だった。
―――Ver6.2 約束という枷 終
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