Ver4.5 深宇宙の呼び声

 ボイジャー1号。

 1977年に打ち上げられた無人宇宙探査機。

 主に木星や土星を観測する任務を負っていた。

 その後、星間ミッションに移行し、太陽系を脱出。

 星間空間を漂い、最後まで地球にデータを送信していた。



 というのは、100年も昔の話である。



 私も、クソンに言われてぼんやり思い出したレベルだ。

 この無人探査機の存在を現代で覚えている人は極々少数だろう。


「ごめん、もう少し調べるからまた後で連絡するね!」


 そう言ってクソンは一方的に通話を切った。


「くっそ……ボイジャーが何なんだよ……」

「いや、私は少し見えて来ましたよ」


 振り返ると、すぐ横にジゥが立っていた。

 聞き耳を立てていたのか……。


「チップの正体は衛星電波の受信」

「うん」

「普通に考えれば、このチップが原因で意識を失い、魂が抜けたと考えれますね」

「このチップに魂を抜く力があるってことか?」

「…………」


 ジゥは黙りながら思案を巡らせているようだった。

 そして、ゆっくりとした口調で話始めた。


「これは……完全に仮説です」

「ああ」

「はっきり言って……私も信じられないのですが……」


 ジゥは恐る恐る言葉を続けた。


「この電波は、魂を送信しているのではないでしょうか……?」


 はい?

 声にならない声が出た。


「仮説です」

「いや……それもう妄想の域だろ」

「これがエラーコード九十九案件であれば、この可能性は飛躍的に上がりますよ」

「根拠はなんだよ」

「我々も知ってるやつがあるじゃないですか」

「うん?」

「幽体離脱ではなく、魂が抜け、ある場所へ移動……旅行……といえば?」


 そこまで言われてやっと理解した。

 魂が抜け。

 ある場所へ向かう。

 それを目的とした術理が一つあった。


「アストラル投射か!―――」




 ―――人々は夢見た

 ―――無限の知識と新たな世界を

 ―――それを手に入れるためには何が必要なのか


 ―――金?

 ―――名誉?

 ―――信仰?


 ―――いいや、違う


 ―――必要なものは唯ひとつ


 ―――アストラル・ライト


 ―――そのための、アストラル投射





 ――― Ver4.5 深宇宙の呼び声 終

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